2014年3月6日木曜日
仮想の分子標的 (Putative Molecular Targets for AD)
A β Amyloid と Tau
Amyloid;
第二段階はγセクレターゼにより,A β (A β 40-43) のC 末端部分が分解されます.
Tau
は過剰にリン酸化を受け機能不全となる
Tau は神経タンパク質で大部分がアクソン(軸索)に存在しており,細胞体に存在していることは少なく,神経突起にはほとんどありません.
調節ユニットであるp35 はカルパインにより切断を受けてp25 となりますが,これはアルツハイマーの脳内に蓄積します.この切断は皮質ニューロン内でA βにより誘導されることが報告されています.
Tau のリン酸化に関与するタンパクキナーゼとしては他にMARK
が知られています.この酵素は微小管結合領域のKXGS モチーフを選択的にリン酸化します.MARK はSer262 を主にリン酸化しますが,Ser293,Ser324,Ser356 もリン酸化します.
Tau は微小管結合部位の数箇所(Ser262, Ser356 影響大,Ser293, Ser324 やや影響大) がリン酸化されるだけで微小管への結合能を失ってしまいます.
これはTau が,微小管結合部位どうしで自己重合し,カルパインがこれらの部位に近づけなくなった結果と考えられます.
Tau の自己重合は,酸化環境下で促進されます.また,酸化環境下でTau の集合が進むと糖鎖付加,つまり非酵素的な還元糖の付加がおこります.これはリジン残基のところで起ることが多く,Schiff 残基の形成の結果だと思われます.
糖鎖付加と過リン酸化が両方されたPHF-Tau は,過リン酸化だけされていて糖鎖付加されていない可溶性Tau と比べて微小管結合能が格段に落ちます.酸化的架橋を受けることによりタンパク質はプロテアソームの活性を阻害することにで分解を受けにくくなります.従って酸化的架橋はNFT 内でのユビキチン抱合体の蓄積の重要な原因かもしれません.神経変質性を伴う疾患ではユビキチンの濃度が高くなっていることも報告されています.それで,酸化ストレスを減らすとアルツハイマー病の発症を抑えるうえでの治療的効果があるのかという重要な問題が上がってきます.
実際,フリーラジカルの生成を抑える薬品がアルツハイマー病の発症と進行を遅らせることが示されています.
14. アルツハイマー症関連阻害剤
それで,酸化ストレスを減らすとアルツハイマー病の発症を抑えるうえでの治療的効果があるのかという重要な問題が上がってきます.実際,フリーラジカルの生成を抑える薬品がアルツハイマー病の発症と進行を遅らせることが示されています.プロピル没食子酸,ビタミンE などの抗酸化剤,Ntert- ブチル- β - フェニルニトロンのようなスピントラップ剤はA βを与えた培養細胞での神経毒性を減少させます.
ビタミンE はラットにおいて海馬の神経の生存を促進し,機能低下したコリン作動性ニューロンを回復することが報告されています.ニューロンのダメージを最少化する別の方法としてAPP からのA βの生成を減らす,または阻害するという方法があります.β , γセクレターゼの活性を阻害することは魅力的な治療法です.というのは臨床的にこの段階に介入することで,老人斑の形成と神経細胞死にいたる初期段階に
効果があると考えられるからです.
14. アルツハイマー症関連阻害剤__
Indirubin-3´-monoxime
402085
サイクリン依存性キナーゼの強力な阻害剤(Cdk1 に対してIC₅₀ =
180 nM).広い細胞スペクトルに対し,細胞周期をG₂/M 期にとどめることによって増殖を阻害します.in
vitro でタウリン
酸化を阻害し,in
vivo ではアルツハイマー疾患に特異的な部位タウリン酸化を阻害します.CdK5 によるDARPP-32 のThr75 のリン酸化をin vivo で阻害することも報告されています.
Indirubin-3´-monoxime,
5-Iodo- 402086
グリコーゲンシンセターゼキナーゼ3 β (GSK-3 β ) の極めて強力な阻害剤(IC₅₀ = 9 nM).Cdk1(IC₅₀ =
25 nM) およびCdk5(IC₅₀ = 20 nM) の活性も阻害します.インジルビン誘導体は,Cdkと結合する場合と同様に,GSK-3 βのATP 結合ポケットに結合します.GSK-3 βとCdk5 は,大半の場合,アルツハイマー病(AD) における微小管結合タンパク質Tau の異常な過剰リン酸
化の原因となっています.
Indirubin-3´-monoxime-5-sulphonic
Acid 402088
Cdk1(IC₅₀ = 5 nM) およびCdk5(IC₅₀ =
7 nM) の強力な阻害剤.グリコーゲンシンセターゼキナーゼ3 β (GSK-3 β ) も阻害します(IC₅₀ = 80 nM).このインジルビン誘導体は,Cdk との結合と同様,GSK-3 βのATP 結合ポケットと結合します.GSK-3 βとCdk5 は,大半の場合,アルツハイマー病(AD) における微小管結合タンパク質Tau の異常な過剰リン酸化の原因となっています.
Ro-31-8220
557520
{3-[1-[3-(Amidinothio)propyl-1H-indol-3-yl]-3-(1-methyl-1H-indol-3-yl)maleimide;
Bisindolylmaleimide IX, Methanesulfonate}
プロテインキナーゼC(PKC)
の競合的阻害剤(IC₅₀ = 10 nM).CaM キナーゼII(IC₅₀ =
17 μM),プロテインキナーゼA(IC₅₀ = 900 nM) から選択的に作用します.また,MAP キナーゼ・フォスファターゼ1 の発現の阻害剤,かつJNK1 の活性化因子アクティベーターです.HL-60 細胞において,PKC への効果とは独立にRaf-1 のリン酸化を阻害し,アポトーシスを誘導します.CAS
138489-18-6.
InSolution™
Ro-31-8220 557521
{3-[1-[3-(Amidinothio)propyl-1H-indol-3-yl]-3-(1-methyl-1H-indol-3-yl)maleimide;
Bisindolylmaleimide IX, Methanesulfonate} Ro-31-8220 ( 製品番号
557520) の5
mM (500 μg/182 μL) 水溶液です.
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