2013年9月30日月曜日

学会の要旨(2)

ピペラジン導入反応(C-ピペラジニル化反応) の検討と展開(2)


 
(序) トップドラッグ(1)は高度完成型の医薬品であるが、プロセス研究の観点から見ると、さらなる創薬展開の起点にもなりうる。(2)日本で造られたトップドラッグに関する近刊書の中から、代表手的な日本製品を選び出すと、エビリファイ、イリノテカン、ピタバスタチン、クレストール、アリセプトなどがある。
 
一方、現在最先端で開発中のものに目を転じても、類似構造の開発品があることに気づく。端的な例を挙げると、Voritoxetine, JTC-801, Lenvatinib 等が、活性の面からも注目に値するものである。即ち安直且つ安全な創薬研究は、トップドラッグとトップドラッグ候補の中にシーズフラグメントを求めるべき時である。

 

本稿の主題となるエビリファイオランザピン、クエチアピン、ルラシドンの重要フラグメント構造(メッセージ構造)はアリールピペラジン環である。筆者らはエビリファイの開発が本格化した2000年ころよりアリールピペラジン構造のプロセス研究を始め、その研究成果の一端は既に報告済である。多様なアリールピペラジン環の製造法についても、反応と合成のシンポジウム(回2011年徳島)にて報告した。即ち、古典的工業製法から、最近の金属触媒アミノ化反応まで各種(約6種程度)の合成法が適用可能である。しかし、それぞれに固有の問題点も顕在し、今日的見地からの簡便かつ安全な新合成法の開発はジェネリック生産を含む関連製薬企業にとっての戦略的急務となっている。

 

(1.C-ピペラジニル化反応)
Pd触媒によるBHアミノ化反応はハロベンゼンからのアリールピペラジン合成に有用であることが示されている。我々も既に、ポリハロベンゼンでの選択的なモノピペラジニル化反応について検討し、若干の問題点を指摘した。例えば、ポリハロ体のPd触媒アミノ化反応では、共存するハロゲン種の為、加熱反応下に複雑な生成物(夾雑物)を与えた。そのような傾向は特に、3連続置換型ハロベンゼンにおいて顕著であるが、立体的な因子からの制御条件も見出している。

 一方Wynbergアミノ化反応はメトキシ基を脱離基とする無触媒、塩基性ピペラジニル化(C-ピペラジニル化)反応である。興味深い点は、Wynbergアミノ化反応では、ハロゲン脱離基よりも、メトキシ基の方が優先的に反応するという点である。Wynbergアミノ化反応の特徴を以下に図示する。

 

 今回、Wynbergアミノ化反応の展開として、ジプラシドン、ペロスピロン、ルラシドン の含まれる含硫アリールピペラジンフラグメントの新合成法開発について報告する。合成コンセプトの主眼は、古典的試薬(中間体)を用いない、既存の鍵中間体からの新規なアリールピペラジン合成法の開拓である。


(2. 新合成法の検討)
新合成法開拓のスキームを下図に示した。その骨子は、以下の点に要約される。


1.開示特許中の重要中間体アミドを出発原料とする。
2.アミドをイミノエーテルへと変換する(安全な合成中間体)
3.イミノエーテル型 Wynbergアミノ化反応条件の探索。
4.アミドからの直接的カルボニル=ピペラジニル化の探索。
5.アミドからフッ物への変換反応の検討。




 

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