2012年10月29日月曜日

化学事故 2

実習事故


ここでは3つの典型的な事故例を挙げて、その原因の解析を行う。一つ目は、体調不良の学生が起こした事故、二つ目は分かりきった基本操作を無視した(死亡)事故、三つ目は、新聞紙上をにぎわす爆発事故の裏にある管理体制の問題点 などである。これら三つの事故は、化学反応中での暴発事故ではなく、基本的扱い、あるいは保管中の事故であるところがポイントである。十分な安全教育が行われているために、そこで触れない部分が新たな事故の起きる場になっている。

 

初めの例は、実習の出席日数が足りなかったS君が特別に予備実習を受けた時のことである。本来の実習であれば複数人がグループになっているのが、特別の補講実習であったために、S君が一人で全行程を行うことになった。

 

この日S君は朝食抜きで大学に行き、(補講実験であるため)朝から実験を始め、夕刻近くまで実験室にいた。さらに悪いことに、実験を早く終わらせようと、昼食も抜いたのである。その日の夕刻、実験も終盤にさしかかった時、廊下へ出たS君は突然、意識を失いそのまま後ろ向きに倒れ、後頭部を強打した。廊下には血が流れ、S君は救急車で近くの専門病院に運ばれた。精密検査の結果、致命的な状況には至らないことが分かったが、食事をとっていない事を初めに言わなかったために、脳神経外科的な様々な検査を受ける羽目になった。S君は傷の手術を行い、約1週間の入院後に退院した。入院中S君は、食事抜きでの1日実験がきつかったことを明らかにした。

 

これは、補講実験という特別なものであるが、研究生活に入る前の学生実習では不慣れなために、予想以上の(個人差のある)ダメージがあることを注意しなければいけない。



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