2012年10月29日月曜日

化学事故 1

なぜ事故は尽きないのか



化学事故は尽きない。大なり小なり、誰しもが経験するものであるが、決して気分よく話のできるものではないし、真実についてもはっきりしないことが多い。事故を防ぐためには、この辺のあいまいさを振り払いたい。事故を玉虫色にして片ずけてはいけない。

 

最近では、十分時間をかけた安全指導が行われており、実験操作法の解説書や、事故例をまとめた清書なども豊富にある。にも拘らず、事故は尽きることはない。本来、考えたくはない事故のことを意識するか、しないかの違いが、悲劇につながったことは、先の福島原発事故でも分かる。実験の初めに、事故について考える癖をつけることが、事故を未然に防ぐ最良の手立てである。

 

この章では、過去の事故例を解析し、共通の原因、端緒を拾い上げることを念頭において解説するが、特に実験者側の心理まで突っ込んで考えておきたい。これが本章の特長である。何を考えて、何を考えなかったか、を検証してみたい。

化学事故の実例とその原因については、次の節で詳しく述べるが、大まかには1.実験者側のコンデイション不良; 2.実験環境(計画)の不良 のいずれかが含まれている。ここで特に重要なことは、実験者のコンデイション作り、即ちメンタルな部分も含めた実験者の体調である。体調不良で実際にどの程度の事故になったかは、次節で解説する。どれだけ厳密な注意をしても、無理をしたり、あわてて実験すれば、もともこもないのである。

 

学習実験では、指導者側も事故のことばかりを表にだせない。正しい操作法を強調するのが常である。しかし学習実験などは特に失敗する経験を積むことも必要であり、指導者側が実験のスピードや結果のみで評価をしないような姿勢も大事ではなかろうか。失敗する実験例を記し、それを考えて正しながらやるような実験書があってもよいのではないか。





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