タウの過剰なリン酸化
Tau は過剰にリン酸化を受け 機能不全となります・
そして、自己重合 をおこします。
アルツハイマー病の脳内でのTau タンパクの挙動には
異常な特徴がみられます。
アルツハイマー病では,
通常水溶性の細胞骨格タンパク質である
Tau や神経繊維が不溶性のPHF に変わっています.
これはTau が
多くのキナーゼにより過剰にリン酸化されることが重大な引き金になっています。
リン酸化はキナーゼカスケード,NF- κ B の活性化を経由した酸化ストレス
と関連しています.
Tau は神経タンパク質なので大部分がアクソン(軸索)に存在しており,
細胞体に存在していることは少なく,神経突起にはほとんどありません.
in vitro では,Tau は
カルモジュリンキナーゼII,カゼインキナーゼII,PKA, ERK2, GSK3 など各種タンパクキナーゼの基質となります.
サイクリン依存性キナーゼ5 と,そのp35 アクチベーター複合体(Cdk5/p35) もTau の過リン酸化に関与しているタンパクキナーゼです.
調節ユニットであるp35 は
カルパインにより切断を受けてp25 となりますが,
これはアルツハイマーの脳内に蓄積します.
この切断は皮質ニューロン内でA βにより誘導される
ことが報告されています.
Tau のリン酸化に関与するタンパクキナーゼとしては
他にMARK が知られています.
この酵素は微小管結合領域のKXGS モチーフを
選択的にリン酸化します.
MARK はSer262 を主にリン酸化しますが,Ser293, Ser324, Ser356 もリン酸化します.
アルツハイマー病においては
Tau のSer262 リン酸化が始めに起こり,
Tau の機能が不全となって PHF, NFT 形成につながることが示唆されています.
PHF のTau は少なくとも 19 か所でリン酸化
されており,そのうち9 か所は Ser/Thr-Pro モチーフ
をもっていることが報告されています.
Tau は過剰にリン酸化された結果,
微小管と結合できなくなり,微小管の重合を促進することになります。
過リン酸化されたTau は
微小管ネットワークの安定性の低下,
軸索輸送の阻害,NFT の形成,神経死
の原因となります.
Tau は微小管結合部位の数箇所
(Ser262, Ser356 影響大,Ser293, Ser324 やや影響大)
がリン酸化されるだけで微小管への結合能を失ってしまいます.
さらに興味深いことに,過リン酸化されたTau は
カルパインによる分解を非常に受け,
微小管への結合能を失ってしまいます.
さらに興味深いことに,過リン酸化されたTau は
カルパインによる分解を非常に受けにくくなります.
これはTau が,微小管結合部位どうしで自己重合し,
カルパインがこれらの部位に近づけなくなった結果と考えられます.
Tau の自己重合は,酸化環境下で促進されます.また,酸化環境下でTau の集合が進むと糖鎖付加,つまり非酵素的な還元糖の付加がおこります.これはリジン残基のところで起ることが多く,Schiff 残基の形成の結果だと思われます。
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