https://www.youtube.com/watch?v=UnWF28nClJM
女主人の物語
童話でなくても 山小谷に生まれても 生まれなくても
狩に出かけた旅人は<山猫軒>の谷に招かれ 疲れたからだを癒すために
アルコールを友とする 中途半端な途におちいるものだ。
アルコール依存は 近年女性に多くなったと言われているが、
山小谷村ではちょっと違っていた。生活の中の安堵感を持続させるために、
疲労感、空虚感をうめるのにもアルコールは百薬の長であった。
キッチン・ドリンカー という言葉は 山小谷村にはあてはまらない。
古酒を飲むことは村民のアイデンテイテーであり、
DNA その証明であった。
従って昼ひなたで古酒を飲めることが、
とりもなおさず山小谷の習慣であり、
村落のアイデンテイテーであったのだ。
どんな習慣であっても 抵抗する力を麻痺させる点は同じである。
山荘の女主人も昼酒呑みであったから、精神と肝臓を痛めるのには
たいして時間がかからなかったし、当たり前のこととされていたのだった。
やがて女主人が二十歳になった時には、母親に連れられて
山荘の階上に避難するようになったのだった。
昔の女主人も 今泣き崩れた不都合な女と同じ
アルコールに身をゆだねた 旅人だった。
3階の部屋に入れられた女主人は夜になると
奇声を発し続けるのが常だった。
そうして黒毛山荘の管理人夫婦と三人でここで暮らした。
三人往けばわが師あり という言葉があった。
たかが三人であったが 依存の谷に落ちた女主人にとっては
わがままな我が身を省みるには
格好のわが師 わが時であった。
そうして思い立った若い女主人はまず借金をして、
時代遅れの軽自動車に乗り、仕事をするために
近隣の町まで通うようになった。
その行き帰りこの山荘で過ごし、
自分でも管理人夫婦の手伝いをして恩返しをした。
女主人は、やがて働いて貯めたお金で、
看護学校にも 通った。
新しい 主人公
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