2014年10月7日火曜日

 

 

複素環スタチンのプレイオトロピック効果とMOアナリシス


 

1高崎健康福祉大・薬,2同志社大脳科学研,徳島大院薬,4群馬大院理工,5DNPファインケミカル宇都宮他)

○鳥澤保廣,村上孝,藤田有紀,杉本八郎,笠原真一郎伊藤智広,根本尚夫

堀内宏明,安田 実5, 高橋康弘,門馬良成


 

【目的】  ジェネリック医薬品には癌やアルツハイマー病(AD)などの難治疾患治療薬候補となる プレイオトロピック効果(多面性効果) を有するものが知られている。 シグナル伝達に直接かかわる新しい分子標的薬の開発が活発に行われる一方で、シグナル伝達に間接的にかかわるようなジェネリック薬の発掘は有効なリポジション型創薬の起点となる。

 

我々はヘテロ環構造に注目したジェネリック薬の機能解明をめざして各種検討を行ってきた。即ち、各種ヘテロ環型ジェネリック薬及び、既存の各種色素,生理活性ペプチドなどのタウ凝集阻害活性を調べ、共通する構造単位の探索、解明を行った(前報)。

本発表では、スタチン薬のプレイオトロピック効果、特にシグナル伝達に関与するキナーゼ系に対する効果を解明する目的で、各種複素環スタチンについてのROCK(キナーゼ)との相互作用を調べる研究を行ったので、その経緯について報告する。

複素環スタチンとして今回特に注目すべものは、アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンの3品である。

 

 

【結果・考察】  周知のように、スタチン類はコレステロール合成に関わる酵素(HMGCoA)阻害剤として開発され、現在高脂血症薬としてブロックバスター薬の代表になっている。市販後の大規模調査に於いて確認された脳梗塞抑制や、高血圧改善作用はこの酵素阻害作用に基づくものと考えられる。 その一方で、これとは異なる分子メカニズムによる重要な治療効果を示唆する論文が多く見られる。

例えば、2011年に福井大のグループは、ピタバスタチンのアルツハイマー改善効果を報告しているが、これはRho/ROCK系シグナル伝達に対する効果と推論されている[1]。

もし、Rho/ROCK系シグナル伝達をスタチンが制御できるのであれば、それは癌代謝や癌転移、ひいては血管新生等の重要なイベントにかかわる可能性を示唆するものであるから、このシグナル視点で、スタチンの効果を解明することは重要なリポジション創薬研究になる。

 

我々はまず文献[1]に従って、ピタバスタチン(PTA)のタウセグメントに対する直接的な凝集阻害活性を調べた。既知のメチレンブルー(MB)をポジテイブコントロールとしたアッセイ系では、ピタバスタチン群では殆どタウ凝集阻害効果は見られなかった。さらにピタバスタチンのキノリン環を持った化合物においても、特段の目立った活性は見出されなかった。その一方で、ピタバラクトンにはわずかながらも 活性の兆候が見られた。このアッセイから、PTA(カルシウム塩)はアッセイ系には難溶であり、その活性増強にはまず可溶化させる誘導体化が必須であることがわかった。そこで次に、ピタバスタチン及びその関連キノリン性化合物に関して、Rho/ROCK系シグナル伝達系への影響を調べる検討を行った。

 

 初期調査において、PTA及びその極性型BGLアミドにおいて、Rho/ROCK系シグナル伝達に関係する癌細胞系への抑制効果が見出された。即ち癌の代謝と動きを抑える効果が見られ、ROCKシグナル伝達系でのプレイオトロピック効果が確認された。さらには極性BGL誘導体化と、関連する分子軌道計算からの知見についても報告する。

 

 

 

 

Pleiotropic Effect of Heterocyclic Statins and MO Analysis

 

 

Yasuhiro Torisawa1, , Takashi Murakami1, Yuki Fujita2, Hachiro Sugimoto2, Shin-ichiro Kasahara3, Tomohiro Itou3,

 Hisao Nemoto3, Hiroaki Huriuch4, Minoru Yasuda5*,Yasuhiro Takahashi5, Yoshinari Monma5.

1 Takasaki University Health & Welfare, 2Dousisya University, 3Tokushima University, 4Gunma University,

5 DNP Fine Chemicals Utsunomiya, Ltd.,

 

 

In order to gain knowledge about pleiotropic effect of Statins, we are now interested in the tau aggregation inhibition and ROCK signal modulation by such heterocyclic statin as Pitavastatin (PTA), Rosvastatin and related hererocyclic structures.

According to the previous report on the improvement of Alzheimer’s disease (AD) by PTA [1], we are carefully investigated on the tau-aggregation inhibitory effect of PTA and other quinolones. In our in vitro assays, however, any distinctive activity was found towards tau segment aggregation, while PTA-lactone showed marginal inhibition activity.

 

These initial results showed us that solubility problem was an important factor, and also, signal modulation assays with other ROCK system is essential. Thus, the in vitro tumor growth inhibitory assays are conducted, and the ROCK signal modulation of PTA and PTA-BGL was observed in our preliminary experiments. Further insights into the pleiotropic Statins by MO calculation are addressed in the presentation. 

 

Tadanori Hamanoa*, Shu-Hui Yen, Tania Gendron, Li-wen Ko, Masaru Kuriyama

Pitavastatin decreases tau levels via the inactivation of Rho/ROCK

Neurobiology of Aging 33 (2012) 2306–2320

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