2014年10月29日水曜日

癌代謝シグナル分子の探索研究(1)

癌代謝シグナルの調節分子探索(1)

 

 

癌細胞の過剰な酸化・還元シグナルに対し、

適切な アクセプター(又はドナー) となりうる小分子探索は、

新たな癌化学療法の端緒を拓く。

即ち、過剰な酸化シグナルをクエンチする抗酸化物質と共に 

還元シグナルをもコントロールする小分子の発掘も

重要なプロセスと考えられる。

 

生体酸化シグナルである 活性酸素(ROS)や NO 

に対し還元シグナルとなりうるものは H2S と CO である。

 

 

 

過剰なシグナル分子に対して関与できる

小分子(シグナル)を介在させることができれば 

直ちに癌細胞代謝の簡便な調節を可能にする。

 

還元シグナルである 水素原子(H・)に対し 

直接的な反応性を有する有機小分子は、

適切な構造の不飽和結合化合物であり、

それらはさらに簡単なバイオアッセイや MO計算 により

ロジカルなアプローチと解析が可能である。

 

身近なラジカル反応性の高い化合物を

LUMO係数に注目して選別すると いくつかの環状型ヘテロ環が

有望視された。

 

 

そこでそのようなものの中で 

含窒素・含硫化合物について 

MOアナリシスと癌細胞アッセイを行った結果について報告する。





含硫医薬品や類似の天然生理活性化合物は広く知られているが、
ラジカルアクセプターであり同時にドナーにもなるような 小分子の見極めは
十分ではない。以上の観点から 含硫医薬品の
ラジカルドナー活性に注目したシグナル調節物質の 探索を開始した。




さらに、リファインして頂きますように。
世路志久。

2014年10月27日月曜日

H2S As Redox Signal For Cancer Therapy 2014

H2S and its role in redox signaling

 

Highlights

H2S, a signaling molecule is produced and cleared by the sulfur metabolic network.
The mechanism and regulation of H2S action remain largely unknown.
The chemical properties of H2S and its varied physiological effects are discussed.


Abstract

Hydrogen sulfide (H2S) has emerged as an important gaseous signaling molecule that is produced endogenously by enzymes in the sulfur metabolic network.


H2S exerts its effects on multiple physiological processes important under both normal and pathological conditions.


These functions include neuromodulation, regulation of blood pressure and cardiac function, inflammation, cellular energetics and apoptosis.


Despite the recognition of its biological importance and its beneficial effects, the mechanism of H2S action and the regulation of its tissue levels remain unclear in part owing to its chemical and physical properties that render handling and analysis challenging.


Furthermore, the multitude of potential H2S effects has made it difficult to dissect its signaling mechanism and to identify specific targets. In this review, we focus on H2S metabolism and provide an overview of the recent literature that sheds some light on its mechanism of action in cellular redox signaling in health and disease.


This article is part of a Special Issue entitled: Thiol-Based Redox Processes.

Abbreviations

  • AdoMet, S-adenosylmethionine;
  • AdoHcy, S-adenosylhomocysteine;
  • ATF4, activating transcription factor 4;
  • BKCa, large conductance calcium-sensitive potassium channel;
  • CBS, cystathionine β-synthase;
  • COX-2, cyclooxygenase-2;
  • EDHF, endothelial-derived hyperpolarizing factor;
  • ER, endolasmic reticulum;
  • ERK, extracellular signal-regulated kinase;
  • ETHE1, persulfide dioxygenase;
  • GSH, glutathione;
  • H2S, hydrogen sulfide;
  • ROS, reactive oxygen species;
  • RNS, reactive nitrogen species


Keywords

  • Redox;
  • Thiol;
  • Hydrogen sulfide
  • Signal;
  • ROS
  • RNX
  • RRS: Reactive radical Species of Interests

癌代謝を調節するラジカル・ドナー分子の探索



癌細胞の過剰な酸化・還元シグナルに対し、
適切な アクセプター(又はドナー) となりうる小分子探索は、
新たな癌化学療法の端緒を拓く。

即ち、癌細胞の酸化シグナルをクエンチする
抗酸化物質の活用と共に 
還元シグナルをコントロールする小分子の発掘もまた
重要な道標である。

生体酸化シグナルである 活性酸素(ROS)や NO に対し
還元シグナルとなりうるものは H2S と CO である。
生体にとって 有毒なこれらシグナル分子を
癌細胞代謝の近傍で介在させることができれば
直ちに癌細胞代謝の簡便な調節を
可能にする 一手法となる。

生体の還元シグナルである 水素原子(H・)に対し
直接的な反応性を有する有機小分子は、適切な構造の
不飽和結合化合物であり、それらはさらに
簡単なバイオアッセイや MO計算により
詳細なアプローチと解析が 可能である。

身近なラジカル反応性の高い化合物を
LUMO係数に注目して選別すると 
いくつかの環状型ヘテロ環が 有望視された。

そこでそのようなものの中で 
含硫化合物について MOアナリシスと
癌細胞アッセイを行った結果について
報告する。




含硫医薬品や類似の天然生理活性化合物は
広く知られていたが、ラジカルアクセプターであり
同時にドナーにもなるような 小分子の見極めは
十分ではない。

以上の観点から 含硫医薬品の
ラジカルドナー活性に注目した
シグナル調節物質の 探索を開始した。











 

Hydrogen Sulfide As Bio Effective Molecules 2014



reviews

生理活性物質としての 硫化水素

Hydrogen Sulfide As a Bioactive Molecule




野口 範子渋谷 典広
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
神経研究所
山中 一哲木村 英雄
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
神経研究所
要旨
 Hydrogen sulfide(H2S) is recognized as a neuromodulator, smooth muscle relaxant, cytoprotectant, and the regulator of insulin release. H2S is produced from L-cysteine by cystathionine β-synthase(CBS), cystathionine γ-lyase(CSE),  and 3-mercaptopyruvate sulfurtransferase(3MST) coupled with cysteine aminotransferase(CAT).  A part of H2S produced by enzymes is stored in cells as bound sulfane sulfur, which in turn releases H2S when cells are stimulated. The current methods such as gas-chomatography and poralography for H2S detection require the process of extracting H2S from cells and tissues. In contrast, recently developed fluorescent probes sensitive to H2S enabled a real-time monitoring of living-cells.
 This review will focus on the function and metabolism of H2S as well as the recent advance in the detection of H2S.
キーワード : 硫化水素、システイン、CBS、CSE、3MST、結合型硫黄、硫化水素プローブ


1.はじめに

近年、一酸化窒素(NO)と一酸化炭素(CO)に次ぐ第 3 番目の生理活性物質として、硫化水素(H2S)が注目されている。 H2S は、受容体・イオンチャネル・酵素・転写因子などを標的とし、神経伝達調節・平滑筋弛緩・細胞保護・インスリン分泌調節など実に多彩な作用を示す。 H2S の生産酵素としては、シスタチオニン-シンターゼ(CBS)・シスタチオニンγ-リアーゼ(CSE)・3-メルカプトピルビン酸サルファトランスフェラーゼ(3MST)が同定されている。生体による H2S の制御機構を解明することは生理学上の重要なポイントであるが、酵素によって生産された H2S がどのような挙動を示すのか、その貯蔵と放出のメカニズムも徐々に明らかとなってきた。最近では、 H2S を可視化する蛍光プローブが開発され、従来では不可能であった生細胞内の H2S をリアルタイムで検出する試みが行われるなど、 H2S をめぐる研究は著しい進展をみせている。
 本稿では、H2S の機能と代謝に関する基礎的知見を概説するとともに、H2S の動態解明に向けた新たなアプローチとして注目されている蛍光プローブの開発状況を紹介する。

2.生体内硫黄の存在様態

硫黄は、人体を構成する主要 4 元素(水素・炭素・窒素・酸素)に次いでカルシウムやリンとともに多く含まれる。生体内の硫黄を存在様態に応じて区別すると、安定型と不安定型に類別できる。システインは、最も安定な還元状態(-2 価)の硫黄を有するアミノ酸であり、体内に取り込まれると、最も安定な酸化状態( +6 価)の硫黄をもつタウリンや硫酸などに代謝される(図 1a)。安定型硫黄は、酸やアルカリ、あるいはジチオスレイトール(DTT)などの強力な還元剤で処理しても切断されることはない。一方、過硫化物・多硫化物・ポリチオン酸・チオ硫酸などの硫黄は、不安定な還元状態( 0 価または -1 価)を維持しており、サルフェン硫黄(sulfane sulfur)1) と呼ばれている(図 1b)。このうち過硫化物と多硫化物のサルフェン硫黄は、DTT 還元によって H2S として放出される性質をもち、このようなサルフェン硫黄を特に結合型硫黄(bound sulfur)2) と呼んでいる。また生体には、酸性条件下で H2S を放出する酸不安定型硫黄が存在している(図 1b)。生体試料を pH 5.4 以下の酸性溶液で処理すると H2S が放出されるが 3)、この H2S は、電子伝達系酵素複合体の鉄硫黄クラスターに由来している。


図 1  安定型硫黄と不安定型硫黄
(a) 安定型硫黄 最も安定な還元状態(-2 価)または酸化状態(+6 価)にある硫黄は、DTT などの還元剤や液性の影響を受けない。 (b) 不安定型硫黄 過硫化物・多硫化物・ポリチオン酸・チオ硫酸は、不安定な還元状態( 0 価または -1 価)を維持したサルフェン硫黄をもつ。このうち過硫化物と多硫化物のサルフェン硫黄は、DTT 還元によって H2S として放出される性質をもち、このようなサルフェン硫黄を特に結合型硫黄と呼ぶ。電子伝達系酵素複合体の鉄硫黄クラスターは酸性条件下で不安定な硫黄原子をもつ。
H2S の測定法の 1 つに、強酸性条件下で発色反応を行うメチレンブルー法がある。メチレンブルー法は、排水中の遊離型 H2S を測定する際などに広く利用されるが、この方法を生体試料に適用する場合には、遊離型 H2S を測定しているのか、酸不安定型硫黄に由来する H2S を測定しているのかを区別する必要がある。
 なお、H2S がタンパク質システイン残基のチオールと反応した場合には結合型硫黄が生じるが、最近、この反応はスルフヒドリル化 4) と呼ばれている。 H2S によるスルフヒドリル化は、ATP 依存性カリウムチャネルや転写因子 Nf-kB などの活性を調節するメカニズムとして注目されている。

3. H2S の生産・貯蔵・放出

H2S を生産する酵素としては、これまでに 3 種類が同定されている(図 2)。シスタチオニンβ-シンターゼ(cystathionine β-synthase, CBS)は、L-システインと L- ホモシステインから H2S を生産し、肝臓・腎臓・膵臓・脳などに存在している。シスタチオニンγ-リアーゼ(cystathionine γ-lyase, CSE)は、L- システインまたは L-ホモシステインを加水分解することで H2S を生産する。 CSE は、肝臓・腎臓・膵臓・血管などに多く存在しており、脳では活性は確認されているが、CSE タンパク質は検出されていない。おそらく、CSE と同様の活性をもつ酵素が脳に存在すると思われる。 3-メルカプトピルビン酸サルファトランスフェラーゼ(3-mercaptopyruvate sulfurtransferase, 3MST)は、ユビキタスな酵素であり、ジヒドロリポ酸やチオレドキシンなどの生体内ジチオールの存在下、3-メルカプトピルビン酸(3-mercaptopyruvate, 3MP)から H2S を生産する 5-6) 。なお 3MP は、L-システインとα-ケトグルタル酸からシステインアミノ基転移酵素(cysteine aminotransferase, CAT)によって供給される。
 酵素によって生産された H2S は細胞内ではどのような振舞いを示すのだろうか。その一端が、組織抽出液を用いた検討から明らかになってきた。脳抽出液に H2S を添加すると、H2S は徐々に吸収され、あたかも存在しないかのような挙動を示す 3) 。ところが、この抽出液に DTT を添加すると H2S が再び放出される。この現象は、H2S を添加していない抽出液でも認められることから、結合型硫黄が脳に存在することは確かである。この結果から、内在性 H2S は、酵素によって生産される以外にも、貯蔵型の結合型硫黄から刺激に応じて放出される場合があると思われる(図 2)。
 では、結合型硫黄を H2S として放出する生理刺激とはどのようなものだろうか。一般に、還元性物質はアルカリ域でその還元力を発揮するが、生理的濃度のシステインとグルタチオンを細胞抽出液に添加すると、pH 8.4 であれば H2S が放出されることがわかった 3) 。問題は、このレベルまで細胞内がアルカリ環境となり得るかであるが、神経細胞が興奮するとグリア細胞の NaHCO3 トランスポーターが活性化される結果、グリア細胞内の液性が pH 8.4 まで上昇することを確認している。この結果から、神経活動に伴い H2S を放出する機構があると思われる。
図 2  内在性 H2S の生産・貯蔵・放出
L- システインから H2S を生産する酵素として、シスタチオニン β-シンターゼ(CBS)・シスタチオニン γ- リアーゼ(CSE) ・ 3-メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素(3MST)がある。 3MST の基質 3-メルカプトピルビン酸(3MP)は、L-システインと α-ケトグルタル酸からシステインアミノ基転移酵素(CAT)によって供給される。生産された H2S は結合型硫黄として貯蔵され、生理的刺激に応じて H2S を放出する機構が存在する。

4.シグナル分子としての H2S

神経伝達の調節因子

H2S は、海馬における長期増強の誘導を促進する 7) 。それまで毒物としてのみ扱われてきた H2S がシグナル分子として機能することを初めて報告したことにより、 H2S に対する研究者の見方が大きく変わった。現在 H2S は、NO と CO に次ぐ第 3 番目の生理活性物質として認識されており、その生理作用や薬理作用が国内外を問わず数多く研究されている。
 H2S は、NO や CO と同様に神経伝達を調節するが、そのメカニズムが異なる。 NO は、シナプス後細胞で L- アルギニンから生産された後、シナプス前細胞へ拡散しグアニル酸シクラーゼを活性化する。その結果、cGMP 依存性リン酸化酵素が活性化し、タンパク質のリン酸化を介した神経伝達物質の放出へと至る。一方 H2S は、グアニル酸シクラーゼには影響せず、NMDA 受容体のグルタミン酸感受性を増大させる 7) 。NMDA 受容体のジスルフィド結合が切断されるとグルタミン酸感受性が増大することから、 H2S の還元力が活性化の一因とみられる。ただし、 H2S による感受性増強作用は、より強力な還元力をもつ DTT の効果を上回ることから、 H2S の還元力のみでは説明できない。この点については、さらなる解析が必要であるが、グリア細胞に関する下記の知見を考慮すると新たな示唆が得られると思われる。
 グリア細胞の 1 つにアストロサイトがある。細胞内カルシウム濃度の上昇が近隣の細胞へ伝搬する現象はカルシウムウェーブとして知られるが、 H2S は、アストロサイトの膜電位依存性カルシウムチャネルを活性化することでカルシウムウェーブを誘起させる 8) 。カルシウムウェーブの生理的意義については未だ不明点が多いが、シナプスを取り囲んでいるアストロサイトは神経伝達を調節する上で重要な役割を担うと考えられている。このアストロサイトには CBS が存在し、一方の神経細胞には 3MST が存在している 5) 。これらのことから、シナプス前後細胞およびアストロサイトの 3 者間を H2S が制御している可能性がある。

平滑筋の弛緩因子

内皮細胞由来平滑筋弛緩因子(EDRF)は、アセチルコリンなどの刺激に応じて放出される平滑筋の弛緩因子であり、血圧調節に重要な役割を果たす。EDRF が NO であると同定されて以降、NO のみでは説明のつかない現象が確認されており、現在、EDRF には NO 以外の成分も含まれると考えられている。その可能性のひとつが H2S である 9) 。 H2S は、単独でも平滑筋を弛緩させるが、NO が共存した場合には弛緩作用が相乗的に発揮される。問題は、H2S の生産酵素が内皮細胞に存在するかであるが、CAT と 3MST が内皮に共局在することを確認している 10) 。 H2S には、Akt を介して内皮型 NO 合成酵素を活性化し NO の生産量を高める作用 11) が確認されており、このはたらきが相乗効果の一因と考えられる。
 血圧を調節する要素としては、内皮細胞のみならず血管周囲の脂肪細胞も重要なはたらきを示すことが明らかとなりつつあるが、その脂肪細胞からも H2S が生産される様子である。大動脈血管にセロトニンを作用させると血管平滑筋が収縮するが、脂肪組織が付着した血管においては収縮が減弱する 12) 。減弱効果は、平滑筋に存在する KCNQ 型電位依存性カリウムチャネル(KCNQ チャネル)の阻害剤で抑制されることから、脂肪細胞からは KCNQ チャネルを開口させる「脂肪細胞由来平滑筋弛緩因子(ADRF)」が放出されると考えられている。 ADRF の実体は不明であるが、CSE が脂肪細胞に存在することに加えて、CSE 阻害剤が KCNQ チャネル阻害剤と同様の効果を示すことから、 H2S が ADRF の候補となっている 13) 。しかし、 H2S が ADRF そのものであるか、ADRF の調節因子であるかは不明である。

カルシウム濃度の調節因子

H2S の新たな知見として、視細胞におけるカルシウムイオン濃度の調節作用が明らかとなった 14) 。網膜が物体の輪郭を認知する際には、水平細胞から光受容細胞に対するネガティブフィードバック機構が重要な役割を果たす。そのメカニズムとしては、水平細胞の液胞型プロトンポンプの 1 つである V 型 ATPase がプロトンを放出し、そのプロトンが光受容細胞の L 型カルシウムチャネルを阻害する経路が想定されている。これに対して H2S は以下のように関わると考えている。網膜に光が照射されると、光受容細胞内の cGMP 濃度が低下する。これにより cGMP 依存性イオンチャネルが閉じ、光受容細胞内のカルシウムイオン濃度は低下する。その結果、近傍の水平細胞に対するグルタミン酸の放出が抑制されるが、この状態では水平細胞のグルタミン酸受容体活性が阻害されているため、同細胞内へのカルシウムイオンの流入は抑制される。光受容細胞と水平細胞には CAT-3MST 経路が存在するが、この経路ではカルシウムイオン濃度の低下にともない H2S の生産活性が増加する。 H2S の生産量が増加すると、水平細胞の V 型 ATPase が活性化されプロトンの放出が促進される結果、光受容細胞周辺の pH が低下する。酸性条件下では光受容細胞のL型カルシウムチャネルは阻害されるため、最終的に光受容細胞内へのカルシウムの流入は抑制されることになる。

5.H2S の細胞保護作用

細胞には興奮毒性を有するグルタミン酸を排出しシスチンを取り込むアンチポーターが存在するが、グルタミン酸が過剰に生産されるとアンチポーターが阻害され、細胞内のシスチン濃度が低下する。その結果、細胞内のグルタチオンの合成量が低下し、酸化ストレスに対する抵抗性が損なわれる。これに対して H2S は、アンチポーターを活性化することでシスチンの取り込みを促進するとともに、グルタチオン合成の律速酵素である γ - グルタミルシステインシンターゼを活性化することでグルタチオン濃度の低下を防ぐ作用がある 15)
 H2S の細胞保護作用に関して注目すべき点は、単回投与で顕著な効果が得られることである。妊娠マウスの子宮卵巣動脈を閉塞した後、血流を再開させると、24 時間後には胎児脳内のグルタチオン濃度はコントロールの 24% まで減少し、全胎児が浸軟する。 しかし、母体に H2S ドナーの硫化水素ナトリウム(NaHS)を単回投与(0.4 μmol/kg)すると、グルタチオン濃度は 75% まで回復し、胎児の 3/4 は浸軟を免れる 16) 。培養細胞を用いた検討では、培地中に高濃度のグルタミン酸を添加すると、神経細胞は 8 時間後から死滅が始まり、16 時間後には細胞数が 10% 程度まで低下する。 しかし、あらかじめ H2S を培地に添加すると、死滅開始時間が 12 時間後へ遅れ、死滅率も大幅に低下する。 H2S は、添加してから 1 時間でほぼすべてが揮発してしまうことから、 H2S のシグナルは添加直後から発動されているものと思われる。
 神経系における H2S の保護作用が明らかとなって以来、心血管系・消化器系・泌尿器系などにおける保護効果が相次いで報告されるようになった。たとえば、エネルギー消費の激しい心筋で梗塞が生じ、その後に血液が再灌流すると、活性酸素・炎症・アポトーシスなどが惹起される 17) 。これに対して、再灌流前に NaHS を投与すれば、損傷を軽減し機能を回復できる 18) 。 H2S は、心筋のグルタチオン合成系に作用するだけでなく、Nrf-2 を介した酸化ストレス応答系を活性化することで細胞を保護する。免疫系においては、NF-kB ・ TNF-α ・IL などの炎症性メディエーターの放出を抑制するとともに、白血球の内皮への接着を調節することで血管透過性の亢進を抑制する作用がある。さらに、アポトーシスのイニシエーターとして機能するカスパーゼ 9 の増加を抑制し、アポトーシス抑制因子である Bcl-2 の低下を防ぐ。その他にも、細胞障害性に作用する MAPK スーパーファミリー(MAPK、p38、JNK)によるリン酸化を抑制することなども確認されている。
 現在、 H2S による細胞保護効果は、臓器移植にともなう虚血再還流障害の予防にも有効と考えられている。それにともない、除放性の H2S ドナーが開発されるなど治療対象に応じた効果的な投与方法が模索されている 19)
 網膜に過剰な光が照射すると、酸化ストレスが惹起されるとともに、大量のカルシウムイオンが細胞内へ流入するために障害が起きる。これに対して、 H2S は光障害から細胞を保護することが新たに判明した 14) 。マウスの眼球に光を長時間照射すると、光受容細胞の層構造が破壊される。しかし、腹腔に NaHS (0.4375 μmol/kg)を前投与すると層構造は維持される。その際、活性酸素による核酸の損傷が顕著に低下しており、TUNEL 陽性細胞は非投与群の約 80% まで低下する。 H2S には網膜細胞内のカルシウムイオン濃度を低下させる作用があるため、この作用も保護的にはたらく要因と考えられる。

6.H2S とエネルギー生産

一部の細菌や古細菌が電子伝達系を駆動する際に H2S を電子供与体として利用することは知られているが、哺乳動物でも同様の事例が報告されている 20-21) 。哺乳動物細胞には、細菌のサルファイド:キノンオキシドレダクターゼ(SQR)と類似の酵素 SQRDL が存在しており、この SQRDL が H2S の電子を補酵素 Q に転移することで ATP を生産すると考えられている。興味深いことに、ラット肝臓から単離したミトコンドリアを用いた検討では、 H2S による ATP 生産の増強作用が 3MP でも認められることや、肝癌細胞株の 3MST をノックダウンすると酸素消費量が低下することから、3MST がエネルギー生産に関与するとの見解が示されている 21) 。この報告の 8 ヶ月前には、同じくエネルギー生産に関してストレス環境における H2S のはたらきが報じられている 22) 。マウス腸間膜動脈から単離した平滑筋細胞にカルシウムイオノフォア A23187 を低酸素条件下で作用させると、サイトゾルの CSE がミトコンドリアに移行し、ミトコンドリアの ATP 含量が増加することが示されている。 ATP の増加は CSE 阻害剤で抑制されることから、CSE によって生産された H2S が、ATP 量を維持することで、低酸素ストレスに対する抵抗性を細胞に付与するとしているが、この検討では A23187 による処理が 24 時間と長く、極度のストレスを細胞に与えた特殊な環境を想定したものと思われる。

7.H2S の物性

H2S は、無色の気体だが腐卵臭がするのでその存在がわかる、といわれる。しかし、国際化学物質簡潔評価文書(CICAD)によれば、H2S 濃度が 140 mg/m3(99 ppm)以上ではヒトの嗅覚が麻痺するとされる。 560 mg/m3(398 ppm)以上では呼吸困難をきたすため、臭いに気づかず死に至る危険性があることを認識しておく必要がある。
 NO と CO は水に溶けにくく、溶解度(g/100 ml, H2O/20℃)はそれぞれ 0.006 と 0.003 程度である。一方、 H2S の溶解度は 0.5 と比較的高い。 H2S が水に溶解した場合には、HS- と S2- に解離するが、その解離度は pH に依存する。 pH 7.4 では 8 割が HS に解離し、残りの 2 割は H2S ガスとして残存する。
 H2S の特徴は油にも良く溶けることである。ただし、この場合には HS- には解離せず、 H2S ガスとして油中に存在する。 Dilauroylphosphatidylcholine を含むリポソームを用いた検討 23) では、H2S の膜/水分配係数は 2.0 であるが、膜透過性の良好な NO と CO2 の分配係数がそれぞれ 3.6 と 0.95 であることから、細胞膜は H2S にとって物理的な障壁にはならないと考えられている。数理モデルを用いた H2S の拡散シミュレーションでは、細胞内の H2S がわずか 1 秒間で近隣の 200 細胞に拡散することが示されている 23) 。このモデルでは、夾雑タンパク質等の影響は考慮されていないが、H2S の血中半減期が 151 秒と比較的長いことから、拡散時の損失は最大 7% 程度と低く、実際の細胞においても夾雑物による影響は低いとしている。
 H2S の構造は水(H2O)と類似している。 H2O は、アクアポリン(AQP)を介して膜を通過するが、 H2S にも同様の機構が存在するのだろうか。少なくとも古細菌 Archaeoglobus 属の AQP を用いた検討では、 H2S が AQP を通過することを示す結果は得られていない 24) 。ただし最近、真正細菌 Clostridium 属から HS- チャネルが同定された 25)。このチャネルは、formate/nitrite transport(FNT)ファミリーに属する輸送体であり、細菌内に蓄積した HS- を速やかに排出すると考えられている。哺乳動物には FNT ホモログは存在しないが、同様の機能をもつチャネルが存在している可能性も否定できない。

8. H2S の検出法

H2S は、反応性が比較的高いため、蛍光誘導体化の対象となることが多い。誘導体化により高感度な検出が可能となる反面、前処理やその後の HPLC による分離に多少の時間を要する。一方、誘導体化処理を施さずに H2S を測定する方法もある。ここではガスクロマトグラフィー法と電極法を紹介する。

1.ガスクロマトグラフィー法

炎光光度検出器(FPD)が開発されたことで高感度な検出法が可能となった。現在、揮発性の硫黄化合物のみならずリンやスズ化合物を検出する際に幅広く利用されている。移動相には不活性ガスが用いられ、試料中の硫黄化合物が水素炎で燃焼される際に発する波長 394 nm の光を検出する。化学発光硫黄検出器(SCD)を搭載したガスクロマトグラフィーでは、ステンレスバーナーを用いて従来よりも高温で硫黄化合物を燃焼することで、FPD よりも 10 倍以上の高感度を実現しており、1 ppm(1.41 mg H2S /m3)以下まで定量性を示す。最近では半導体ガスセンサを検出器に使用することで、ppb レベルからの計測を可能とするシステムも開発されている。このシステムは、小型設計で移動相用のガスボンベを必要としないという特徴をもつ。
 ガスクロマトグラフィー法では、生体試料における H2S の生産活性や不安定型硫黄を測定できるが、組織や細胞を破砕することが前提となる。しかし一旦破砕してしまうと、内在性の H2S は生体成分に吸収されてしまうため、正確に測定することは難しいのが実状である。

2.電極法

ポーラログラフィーの原理を応用した H2S センサーが開発されている 26-27) 。センサーの先端部にはシリコンとポリカーボネートの共重合膜が皮覆されており、H2S が選択的に膜を透過すると、アルカリ性の電解液内で HS- と H+ に解離する。電極液にはフェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])が含まれており、HS- によってフェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])に還元された後、白金電極近傍で再びフェリシアン化カリウムに酸化される際に生じる電子を電流値として計測する。システインやグルタチオンをはじめ、酸素や窒素酸化物の妨害を受けることがなく、液相のみならず気相中の H2S を測定できる。検出限界は 10 nM であり、 H2S の濃度変化を 30 秒程度で感知するため、高感度かつリアルタイムに近い検出が可能となっている。ただし、 H2S を検出するためには、ガスクロマトグラフィーと同様に組織や細胞を破砕する必要がある。

9.蛍光プローブによる H2S の検出法

不衛生な口内環境を放置すると、嫌気性菌が繁殖し H2S が生産される。 H2S は口臭の主因であり、これを予防する観点から呼気中の H2S を蛍光検出する方法が開発されている 28) 。蛍光物質 2,2’-Pyridylbenzimidazole は、Hg2+ と錯体を形成することで消光状態を保つ化合物である。しかし H2S が存在すると錯体は解離し、2,2’-Pyridylbenzimidazole 本来の蛍光を発する。この原理を利用して、測定開始から 2 分以内に H2S を検出できるシステムが構築されており、比較的迅速な検査が可能となっている。
 工場排水中の H2S は水質汚濁の原因ともなる。その対策として H2S 検出用の蛍光プローブが開発されている 29) 。 2,4-dinitrobenzenesulfonyl 基を有する蛍光物質は微弱な蛍光(F0)を発するが、 H2S との反応によって 2,4-dinitrobenzenesulfonyl 基が脱離する結果、強い蛍光(F)を発する。 25% アセトンを含む水溶液では、F/F0 は 5.02 であり比較的良好な検出感度を示すが、有機溶媒を含まない場合では F/F0 が 1.44 と低値であるため、生細胞を対象とした測定に適用することは難しいと思われる。
 2011 年に入り、生細胞に適用できる H2S プローブが相次いで開発された。現在も多くのプローブが開発され続けており、より高感度かつ選択的に検出するための改良も進んでいる。これらのプローブは反応機構に応じて 3 つに類別できる。

ⅰ求核反応型

H2S による 2 段階の求核置換反応により蛍光を生じるプローブである(図 3a)。このプローブは、求電子性官能基と蛍光色素からなり、通常は photo-induced electron transfer (PET)効果により消光状態を保っている。しかし、 H2S による求核攻撃を受けると、官能基が脱離し消光状態が解除される。求核反応型のプローブは、 H2S の硫黄原子が官能基に取り込まれるタイプと、蛍光団に取り込まれるタイプの 2 通りに分けられる 30) 。後者は、 H2S そのものを検出する点で特徴的である。なお、システインやグルタチオン等の低分子チオール化合物は、求核攻撃を一度しか行うことができない。そのため、官能基とともにチオール化合物は蛍光色素に保持され、消光状態を保ったままとなる(図 3a)。選択性が高い反面、最大蛍光強度を得るまでに 1 時間程度を要するものが多い。 内在性の H2S は比較的速やかに代謝されるため、リアルタイムでのモニタリングには不向きと思われたが、 H2S との反応から 2 分程度で約 30 倍の蛍光を生じるプローブが開発されるなど改良が進んでいる 31)

ⅱ還元反応型

アジド基(-N3)またはニトロ基(-NO2)を H2S の還元力でアミノ基(-NH2)に変換することで蛍光を生じるプローブである(図 3b)。 現時点ではこの反応を利用したプローブが多く、全体の半数以上を占める。求核反応を利用した場合よりも H2S との反応に要する時間が短いものが多い。なかでも Dansyl azide(DNS-Az) 32) は、強力な電子吸引性をもつスルホニル基にアジドを付加した化合物であり、 H2S との反応を加速させることに成功している。秒単位で反応が終了し、選択性も比較的高いため、短時間で代謝される H2S を追跡する上で効果的と思われる。
 他の多くが化学的に合成した蛍光色素をプローブとして用いるのに対して、遺伝的にコードされる蛍光タンパク質を利用した H2S プローブも開発されている 33) 。人工 tRNA を用いて p-Azidophenylalanine(pAzF)を付加した変異型 GFP(cpGFPTyr66pAzF)は、 H2S で還元されると強力な蛍光を発する。反応は数分で終了し、GFP にシグナルペプチドを付加すれば、特定のオルガネラにおける H2S の動態を解析できると考えられている。

ⅲ金属イオン放出型

銅錯体を形成した azamacrocyclic 環または 8-hydroxyquinoline を蛍光色素に付加した化合物である 34-35)。通常は、消光状態を保っているが、 H2S によってCu2+ が放出されると消光が解除される(図 3c)。比較的短時間に反応が終了し、10 分以内に最大蛍光強度を示す。還元反応型のプローブとは異なり DTT による影響を受けにくいのが特徴で、0.1 mM DTT 存在下でも精製 3MST から生産される H2S を検出することができる 34) 。細胞抽出液を調製する際には、酵素の失活を防ぐ目的で還元剤を添加することが多いため、in vitro での解析に有効である。マルチウェルプレートを用いれば、短時間かつ簡便に H2S を検出できるため、多検体解析時に特にその威力を発揮すると思われる。
 これまでに開発されている H2S プローブの多くは可視光で励起するが、可視光域ではヘモグロビンなどの生体成分の吸収率が高く、透過性が低いために生体深部の観察は不向きである。この点を考慮して、近赤外光(near-infrared, NIR)で蛍光を発するプローブが最近開発された 36-38) 。還元反応型の Cy-N3 は、励起波長 625 nm の NIR で蛍光を発するプローブである。 H2S 非存在下では、Cy-N3 の極大蛍光波長は 710 nm であるが、 H2S 存在下では極大波長が 750 nm に移行する。両波長の比率は H2S の濃度に相関するため、レシオメトリックなプローブとして利用することができる。単波長で検出する場合とは異なり、不均一なプローブ分布に伴う蛍光強度の誤差を補正できる利点がある。その他にも、2 光子励起顕微鏡を用いた H2S の検出が試みられている 39) 。還元反応型のプローブ FS 1 は、励起波長 750 nm の NIR で 2 光子励起すると蛍光を発する。この方法により、海馬スライスの深部領域(90~190 μm)において内在性の H2S を蛍光検出できるとしている。ただし、検出時には 400 ~ 680 nm の広域帯の蛍光をとらえており、H2S 以外の生体成分による可能性も否定できない。特異性に関する更なる検討が必要と思われる。
図 3  H2S プローブの反応機構
(a) 求核反応型 このプローブは求電子性基と蛍光色素をもつ。通常は photo-induced electron transfer(PET)効果により消光しているが、H2S による求核攻撃を受けると、官能基が脱離し消光が解除される。システインなどの低分子チオール化合物は、求核攻撃を一度しか行えないため、蛍光を発することができない。(b)還元反応型 プローブのアジド基(-N3)またはニトロ基(-NO2)を H2S の還元力でアミン基
(-NH2)に変換することで蛍光を生じる。(c)金属イオン放出型 銅錯体を形成した azamacrocyclic 環などを蛍光色素に付加した化合物であり、通常は消光状態を保っているが、H2S によって Cu2+ が放出されると蛍光を発する。

10. おわりに

H2S は、上述の通り多彩なはたらきを示すが、NO と共存した場合には、ニトロソチオール(HSNO)を形成することで単独では認められない新たな作用を発揮することもわかりつつある 40) 。現在開発が進展している H2S プローブに加えて、他の生理活性物質との反応生成物や不安定型硫黄等を可視化できるプローブを利用できれば、 H2S 動態の理解は一層深まると思われる。分子間クロストークにも注目が集まりつつあるなか、 H2S 研究の進展に寄与したいと考えている。

2014年10月25日土曜日

シロスタゾール(2) 2013


Probucol and cilostazol exert a combinatorial anti-atherogenic effect in cholesterol-fed rabbits


 
 

Abstract

Introduction

Probucol (PB) and cilostazol (CZ) both exhibit anti-atherogenic effects. However, their combinatorial effects are unclear. This study was designed to investigate their combinatorial anti-atherogenic effect in cholesterol-fed rabbits.

Materials and Methods

Rabbits were fed a cholesterol diet with PB or CZ alone or both PB and CZ for 16 weeks. The plasma levels of total cholesterol, LDL-cholesterol, HDL-cholesterol, C-reactive protein, superoxide dismutase, malondialdehyde, and nitric oxide (NO) were measured. The aortic atherosclerotic lesions were grossly and microscopically evaluated. Additionally, in vitro experiments were conducted using human umbilical vein endothelial cells.

Results and Conclusion

We found that the PB group and the PB + CZ group exhibited a reduction in the lesion areas (70% in the PB + CZ group, 56% in the PB group) compared with the vehicle group. However, although PB alone and PB + CZ led to a reduction in the lesion size, the histological analysis revealed that only PB + CZ significantly decreased the macrophage accumulation and smooth muscle cell proliferation in the lesions compared with the vehicle group. The plasma levels of total cholesterol in the PB + CZ group were decreased compared with the vehicle group, Moreover, PB + CZ exerted obvious anti-oxidant and anti-inflammatory effects. Interestingly, the PB + CZ treatment led to a marked increase in the levels of plasma NO. The in vitro experiments showed that the combinatorial treatment up-regulated the levels of NO and protein S-nitrosylation in endothelial cells treated with oxidized LDL. In summary, these results suggest that PB and CZ exert combinatorial anti-atherogenic effects.

Abbreviations

  • CRP, C-reactive protein;
  • CZ, cilostazol;
  • eNOS, endothelial nitric oxide synthase;
  • HCD, high cholesterol diet;
  • HDL, high-density lipoproteins;
  • HDL-C, high-density lipoprotein cholesterol;
  • HUVECs, human umbilical vein endothelial cells;
  • LDL-C, low-density lipoprotein cholesterol;
  • MDA, malondialdehyde;
  • , macrophages;
  • NO, nitric oxide;
  • PB, probucol;
  • ROS, reactive oxygen species;
  • SMC, smooth muscle cell;
  • SOD, superoxide dismutase;
  • TC, total cholesterol

Keywords

  • Probucol;
  • Cilostazol;
  • Atherosclerosis;
  • S-nitrosylation;
  • Rabbits


Introduction

Atherosclerosis is a major cause of mortality in both developed and developing countries [1], and hypercholesterolemia is an important risk factor for the development of atherosclerosis. The extensive use of lipid-lowering agents, such as statins, has led to a marked reduction in the number of cardiovascular events in recent years. Despite this achievement, many patients with cardiovascular disease cannot be effectively treated with the use of statins alone [2]. Therefore, it is necessary to develop new therapeutics for these patients.

 
 

Probucol (PB) not only is a lipid-lowering agent but also possesses strong antioxidant properties against low-density lipoproteins (LDL). To date, many studies have shown that PB exhibits anti-atherogenic effects [3]. It has been shown that PB exerts its anti-atherogenic effects through diverse molecular mechanisms, including anti-inflammatory effects, the inhibition of smooth muscle cell (SMC) proliferation, the enhancement of the expression of scavenger receptor class B type I, and the improvement of the functions of high-density lipoproteins (HDL) to enhance reverse cholesterol transport [4], [5], [6] and [7].


 

 

Cilostazol (CZ) is a specific phosphodiesterase type III inhibitor that is currently used for the treatment of thrombotic vascular disease due to its anti-platelet aggregation functions [8]. As an anti-thrombotic drug, CZ is a preferred alternative to aspirin because CZ has fewer side effects, such as increased bleeding time [9]. Previous studies have shown that CZ also exhibits anti-atherogenic effects [10]. In vitro studies have revealed that CZ suppresses the production of intracellular reactive oxygen species (ROS) [11], and increases the production of nitric oxide (NO) [12]. Furthermore, CZ promotes reverse cholesterol transport and inhibits the inflammation and proliferation of SMCs [13], [14], [15] and [16].


 

 

Because both PB and CZ have anti-atherogenic effects, we hypothesized that the combination of minimal doses of PB and CZ may exert additional beneficial effects and may result in a greater athero-protective response. If so, this combinatorial therapy may provide a novel strategy for the treatment and prevention of atherosclerosis for those patients who cannot be effectively treated by statins.

 

 

In the current study, we compared the anti-atherogenic effects of the combination of PB and CZ in cholesterol-fed rabbits with those obtained with either PB or CZ alone. Our results showed that the combination of PB and CZ clearly reduced the aortic atherosclerotic lesion area, and markedly inhibited macrophage (MФ) accumulation and SMC proliferation in the lesions compared with the vehicle group.

 

 

The anti-atherogenic effects of PB and CZ may be collectively mediated by multiple mechanisms, including anti-oxidant effects, anti-inflammatory effects, a decrease in the plasma lipid levels, an increase in the levels of NO, and the maintenance of the endothelial protein S-nitrosylation.

 
 

シロスタゾール & ROCK (1)


RhoA/ROCK-dependent pathway is required for TLR2-mediated IL-23 production in human synovial macrophages: Suppression by cilostazol

  Open Access

Abstract

IL-23 is produced by antigen presenting cells and plays critical roles in immune response in rheumatoid arthritis (LA).
 
 
In this study, we investigated whether the RhoA/Rho-kinase pathway is required to elevate TLR2-mediated IL-23 production in synovial macrophages from patients with rheumatoid arthritis (RA),
and then examined the suppressive effect of cilostazol on these pathways.
 
 
 
IL-23 production was elevated by lipoteichoic acid (LTA), a TLR2 ligand, and this elevation was more prominent in RA macrophages than in those from peripheral blood of normal control.
 
 
LTA increased the activation of RhoA in association with increased the nuclear translocation of NF-κB and its DNA-binding activity.
 
 
Pretreatment of RA macrophages with the pharmacological inhibitors exoenzyme C3 (RhoA), Y27632 (Rho-kinase) or BAY11-7082 (NF-κB) inhibited IL-23 production by LTA.
 
 
Inhibition of the RhoA/Rho-kinase pathway by these drugs attenuated NF-κB activation.
 
 

Cilostazol suppressed the TLR2-mediated activation of RhoA, decreased NF-κB activity with down-regulated IL-23 production, and these effects were reversed by Rp-cAMPS, as an inhibitor of cAMP-dependent protein kinase.

 

 

The expression of IL-23, which colocalized with CD68(+) cells in knee joint of CIA mice, was significantly attenuated by cilostazol along with the decreased severity of arthritis.

 

 

Taken together, the RhoA/Rho-kinase pathway signals TLR2-stimulated IL-23 production in synovial fluid macrophages via activation of NF-κB. Thus it is summarized that cilostazol suppresses TLR2-mediated IL-23 production by suppressing RhoA pathway via cAMP-dependent protein kinase activation.

 
 
 

Abbreviations

  • CIA, collagen induced arthritis;
  • IL-23, interleukin-23;
  • LTA, lipoteichoic acid;
  • RA, rheumatoid arthritis;
  • TLR2, toll like receptor 2

Keywords

  • RA synovial macrophages;
  • RhoA;
  • TLR2;
  • IL-23;
  • Cilostazol

1. Introduction

Rheumatoid arthritis (RA) is a common autoimmune and chronic inflammatory joint disease characterized by increased infiltration of macrophages, proliferation of synovial fibroblast with joint destruction [1]. When abundant monocytes/macrophages in the synovial fluid of RA patients are activated, they produce high levels of cytokines and chemokines, such as interleukin-1β (IL-β), tumor necrosis factor α (TNFα), IL-6, and MCP-1, which contribute to chronic inflammation and joint destruction [2] and [3].
Toll-like receptors (TLRs) are conserved receptors that recognize pathogen-associated molecular patterns, and play important roles in innate and adaptive immunity [4]. TLR2 are mainly expressed on cells, such as macrophages and dendritic cells; and act as primary sensors by recognizing diverse ranges of stimuli [5]. The lipoteichoic acid (LTA) and peptidoglycan are recognized mainly by TLR-2 [6]. It has been reported that TLR2 stimulation causes the preferential induction of IL-8 and IL-23 p19 [7]. IL-23 is involved in autoimmune diseases like RA and psoriasis, in which the cellular function of IL-23 is associated with the self-reactive productions of IL-17, IL-6, and TNF-α, and thus IL-23 plays a critical role in development of autoimmune inflammation [8]. Furthermore, they reported that mice deficient in IL-23 (p19−/−) were relatively resistant to the development of joint and bone inflammation in a collagen-induced arthritis (CIA) model.
The Rho-GTPase family of monomeric RhoA, Rac1 and Cdc42 is known to cycle between the inactivated GDP-bound state and the activated GTP-bound state [9]. In the active state, Rho is implicated in various cellular processes, such as the cell cycle, cytoskeletal regulation, cellular growth and apoptosis [10] and [11]. Furthermore, it has been reported that RhoA is a key regulator of transcription factors, NF-κB [12], and that inhibition of Rho-kinase reduces the severity of synovial inflammation in rats with CIA [13].
Although it has been demonstrated that IL-23 production plays a crucial role in inflammatory reactions associated with rheumatoid arthritis [14], the signal pathway by which TLR2 induces IL-23 production in RA synovial macrophages has not been defined. On the other hand, cilostazol, a type-III phosphodiesterase inhibitor, has been reported to have anti-inflammatory effects due to the cAMP-dependent protein kinase activation-coupled suppression of NF-κB gene transcription [15].
Therefore, in the present study, we undertook to investigate the signal transduction pathways responsible for TLR2-mediated IL-23 production in synovial fluid macrophages from RA patients: in particular, the present study highlighted implication of the RhoA/ROCK signal pathway in the regulation of TLR2-mediated IL-23 production in RA macrophages. We found that increased IL-23 production by TLR2 involves the activation of NF-κB via a RhoA/ROCK pathway. Further, cilostazol was found to inhibit TLR2-mediated IL-23 production by suppressing RhoA activity via the activation of cAMP-dependent protein kinase, and to suppress the expression of IL-23 in the knee joints of CIA mice.

2014年10月24日金曜日

Carboxylic acid derivatives as HDAC inhibitors and cytotoxic agents

 

Design, synthesis, 3D pharmacophore, QSAR, and docking studies of carboxylic acid derivatives as Histone Deacetylase inhibitors and cytotoxic agents

Highlights

6-(4-Substituted phenyl)-4-oxohex-5-enoic acids were synthesized.
Compound IIf (E) displayed significant inhibitory activity against NCI Non-Small Cell Lung.
Compounds were tested on histone deacetylase isoforms.
3D-pharmacophore model and QSAR were generated.



Abstract

In this study,
five series of (E)-6-(4-substituted phenyl)-4-oxohex-5-enoic acids IIb–f (E),

(E)-3-(4-(substituted)-phenyl)acrylic acids IIIa–g (E),
4-(4-(substituted)phenylamino)-4-oxobutanoic acids VIa,b,e, 5-(4-(substituted)phenylamino)-5-oxopentanoic acids VIIa,f

and 2-[(4-(substituted)phenyl) carbamoyl]benzoic acids VIIIa,e
were designed and synthesized.


Selected compounds were screened in vitro for their cytotoxic effect on 60 human NCI tumor cell lines.


Compound IIf (E) displayed significant inhibitory activity against NCI Non-Small Cell Lung A549/ATCC Cancer cell line (68% inhibition) and NCI-H460 Cancer cell line (66% inhibition).


Moreover, the final compounds were evaluated in vitro for their cytotoxic activity on HepG2 Cancer cell line in which histone deacetylase (HDAC) is overexpressed.


Compounds IIc (E), IIf (E), IIIb (E), and IIIg (E) exhibited the highest cytotoxic activity against HepG2 human cancer cell lines with IC50 ranging from 2.27 to 10.71 μM.


In addition, selected compounds were tested on histone deacetylase isoforms (HDAC1–11).


Molecular docking simulation was also carried out for HDLP enzyme to investigate their HDAC binding affinity. In addition, generation of 3D-pharmacophore model and quantitative structure activity relationship (QSAR) models were combined to explore the structural requirements controlling the observed cytotoxic properties.


 


Graphical abstract

Docking model at the active site of HDLP (PDB ID: 1C3S) coincides with the generated 3D QSAR pharmacophore model for E-isomer of compound IIc (E) displaying significant antiproliferative activity against HepG2 Cancer cell line (IC50, 2.27 μM).
Full-size image (19 K)


2014年10月23日木曜日

TOPK Inhibitors: OTS964 2014



TOPK (T–lymphokine-activated killer cell–originated protein kinase) is highly and frequently transactivated in various cancer tissues, including lung and triple-negative breast cancers, and plays an indispensable role in the mitosis of cancer cells.


 We report the development of a potent TOPK inhibitor,
OTS964  {(R)-9-(4-(1-(dimethylamino)propan-2-yl)phenyl)-8-hydroxy-6-methylthieno[2,3-c]quinolin-4(5H)-one}, which inhibits TOPK kinase activity with high affinity and selectivity. Similar to the knockdown effect of TOPK small interfering RNAs (siRNAs), this inhibitor causes a cytokinesis defect and the subsequent apoptosis of cancer cells in vitro as well as in xenograft models of human lung cancer.



Although administration of the free compound induced hematopoietic adverse reactions (leukocytopenia associated with thrombocytosis), the drug delivered in a liposomal formulation effectively caused complete regression of transplanted tumors without showing any adverse reactions in mice. Our results suggest that the inhibition of TOPK activity may be a viable therapeutic option for the treatment of various human cancers.
Citation: Y. Matsuo, J.-H. Park, T. Miyamoto, S. Yamamoto, S. Hisada, H. Alachkar, Y. Nakamura, TOPK inhibitor induces complete tumor regression in xenograft models of human cancer through inhibition of cytokinesis. Sci. Transl. Med. 6, 259ra145 (2014).
 
 
 

2014年10月15日水曜日

Montelukast suppresses EMT @ bronchial epithelial cells by eosinophils



Highlights

Inhibition of EMT by montelukast was evaluated.
EMT was assessed using a co-culture system of epithelial cells and eosinophils.
Montelukast inhibited EMT induced in the co-culture system.
Montelukast decreased TGF-β1 production and Smad3 phosphorylation.
Eosinophils significantly enhanced CysLTs production but montelukast inhibited it.


Abstract

EMT is a mechanism by which Eosinophils can induce airway remodeling.


Montelukast, an antagonist of the cysteinyl leukotriene receptor, can suppress airway remodeling in asthma. The purpose of this study was to evaluate whether montelukast can ameliorate airway remodeling by blocking EMT induced by eosinophils.


EMT induced was assessed using a co-culture system of human bronchial epithelial cells and human eosinophils or the eosinophilic leukemia cell lines, Eol-1.


Montelukast inhibited co-culture associated morphological changes of BEAS-2b cells, decreased the expression of vimentin and collagen I, and increased the expression of E-cadherin.


Montelukast mitigated the rise of TGF-β1 production and Smad3 phosphorylation.


Co-culture of human eosinophils with BEAS-2B cells significantly enhanced the production of CysLTs compared with BEAS-2B cells or eosinophils alone.


The increase of CysLTs was abolished by montelukast pre-treatment. Montelukast had similar effects when co-culture system of Eol-1 and BEAS-2B was used.


This study showed that montelukast suppresses eosinophils-induced EMT of airway epithelial cells. This finding may explain the mechanism of montelukast-mediated amelioration of airway remodeling in bronchial asthma.

Keywords

  • Airway remodeling;
  • Asthma;
  • Cysteinyl leukotrienes;
  • Epithelial to mesenchymal transition;
  • Eosinophils;
  • Montelukast
Corresponding author. Address: Department of Immunology, Mie University Graduate School of Medicine, Edobashi 2-174, 514-8507 Tsu-city, Mie, Japan. Fax: +81 59 231 5225.

2014年10月14日火曜日

Catalytic Amidation By the Aid Of HydroxylAmineHCl 2010



Abstract

Abstract Image
 
 
The simple nickel salt NiCl2·6H2O in the presence of NH2OHHCl catalyzes the coupling of aldoxime intermediate with amines to give the secondary or tertiary amide products.
 
 
 
The aldoxime can be prepared in situ from the corresponding aldehyde.
The use of 18O-labeled oximes has allowed insight into the mechanism of this reaction.
 
 


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