2014年12月30日火曜日

ピタバスタチンの癌転移抑制効果を検証する。

 

スタチン系薬剤による 癌転移抑制効果 の検証。

(スタチン・リポジショニング療法の提案)

 

【背景】

高脂血症薬(抗コレステロール薬)として知られるスタチン類は、1983年のMerck社のロバスタチンの発売に始まり、現在まで約8種の化合物が市場を賑わしている大型新薬(ブロックバスター)である。これら薬剤は、本来の作用(コレステロール合成阻害)以外の多面的効果(プレイオトロピック効果)についても、臨床的な見地から興味が持たれている。現在世界で最も売れているスタチンである、アトルバスタチン(リピトール)については、動脈硬化の抑制、アルツハイマー病進行の抑制などに期待がもたれている。その反面、横紋筋障害や、認知機能の低下等の副作用についても議論されるに至っている。このように、スタチンが関与するメバロン経路の調節は、多様なプレイオトロピック効果の発現を示唆するものであるが、中でも癌転移との関係は近年の癌代謝研究の進展と相まって、最も注目に値する課題と考えられる。

 

【癌研究の動向】

癌代謝研究の中心課題として現在注目を集めているものが1)EMT(上皮間葉細胞遷移)と 2)癌幹細胞制御 の2点である。これまでの基礎研究の結果、これらを標的とする既存医薬品がいくつか見出されている。従って、EMTと癌幹細胞制御に関わる低分子型既存医薬品の探索は時代のニーズにかなった創薬戦略であり、既存医薬品のリポジショニングによってこの目的が達成できれば、創薬の低リスク化をなしとげる格好の研究課題となる。

 

【スタチン薬による癌転移抑制効果の実証】

すでにスタチン類によるコレステロール合成の抑制が、細胞増殖の抑制につながることを示唆する研究成果が多数報告されている (2014総説)。

古典的なスタチン(初期医薬品)であるロバスタチンや類似構造を有するシンバスタチンに関しては、細胞増殖にかかわる幾つかの経路の抑制に基づく、乳がんや腎がん細胞の増殖阻害が昨年の報告で明らかにされている。

特に興味深い事実は、シンバスタチンによって、乳腺管腔構造の破壊が阻止され、正常細胞への回復する点であり、がん細胞の性質を抑制することを意味している。これらの事実に加え、メバロン酸経路の阻害は、宿主免疫系を活性化する報告もなされており、癌微小環境の改善に寄与することが報告されている。従って、スタチン類の抗癌作用を期待した各種誘導体の合成や、リポジショニング創薬は十分期待の持てる癌化学療法の新機軸である。

 

【研究方針: ストロングスタチンの再評価】

ロバスタチンやシンバスタチンは1980年代に開発されたいわば古典的(第一世代)スタチンであり、現在汎用されているスタチンは、先述のアトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンなどがあり、特に日本で開発された後者2品はストロングスタチン(高活性型)と称されている。

 

アトルバスタチン(ファイザー社)とロスバスタチン(AZ社)はすでに、広範囲な市販後調査(PMS)が展開されており、アルツハイマー薬などへの応用開発も試みられている。ピタバスタチンに関しては昨年8月に特許が切れ、本年からジェネリック医薬品が台頭しており、そのプレイオトロピック効果についても興味が持たれている。

 

これらストロングスタチン類の抗癌作用(癌転移抑制効果)の実証については、いまだ明確な報告はなく、信頼できる実験系、その作用メカニズムの検証が急務である。

 

以上のような観点から、ストロングスタチンの癌転移抑制効果とその実態解明につながる動物実験系の構築を行ない、癌化学療法への応用開発についての検討計画を立てた。


 



以下略。

 

癌代謝調節へのドラッグ・リポジション

【癌 ジェネリック・リポジション 創薬】


 

癌細胞の特異的代謝現象(癌代謝)を把握し、

癌代謝調節効果を有するジェネリック医薬品を見出すことは、ジェネリック・リポジションの格好の課題となる。

 
 
 
 【解説】 

癌代謝調節へのドラッグ・リポジション: 

新たな癌化学療法となりうるジェネリック薬の独自アッセイ法 
による選別と、
癌代謝調節物質の発掘を課題とした創薬探索において、
構造及び機能上の特徴として
次の化合物群に注目した。

1.   カルボン酸側鎖にヘテロ置換基、
共役構造、含窒素複素環構造などを含む。

2.   代謝関連物質となる生理活性物質、
及びジェネリック医薬品を含む。

 
【分野と背景】 

簡便な癌化学療法(代替療法)の選択肢となる化合物群と
そのアッセイ法に関する研究成果を提示する。

癌細胞と正常細胞の代謝活動は明確に異なっており、
癌代謝の解明、シグナル伝達研究も活発に行われている。
即ち、癌細胞や増殖期の正常細胞は活発な代謝活動が行われ、
解糖系とそれに続く脂肪酸代謝が亢進していることが知られている
(下図)。

 この癌代謝に関わる中心的代謝物質が、
新たな癌代謝調節物質探索の起点になると考えられる。

即ち癌細胞では、
炭素数5程度のカルボン酸が関与する代謝経路例えば、
クエン酸回路、ペントースリン酸化経路の活発な代謝亢進が認められ、
メバロン酸等の脂肪酸合成に必要な化合物生産とエネルギー(NADPH等)産生状態にある。

一方、脂質炭素骨格は
グルタミン(C5アミノ酸)の分解によっても供給される。
このように癌細胞では、炭素5個の脂肪酸、
メバロン酸、ゲラニル酸、さらにはグルタミン系アミノ酸
の需要が増加した状態にある。

明らかに正常細胞と異なる、
この癌代謝異常(代謝リプログラミング)は、
癌化学療法の新たな治療標的(ターゲット)として注目されている。
従ってこれらC5単位の脂肪酸基質と関連し、

代謝アンタゴニスト作用をもたらす疑似型低分子化合物は、
癌代謝調節の最も単純で有効な医薬品候補となる。

(中心的代謝物が、癌細胞の酸化ストレス耐性に関連した
還元性化合物として機能することは明らかである。)

 

【課題】 

古典的な殺細胞性抗癌剤の多くは
核酸やDNAを分子標的としてその複製を止め(代謝拮抗)、
あるいはまた近年開発された分子標的薬は、
(異常)細胞増殖シグナルを選択的な標的にした
化学療法剤として機能しているが、
相当な副作用を伴うことが問題視されてきた。

特に、近年のキナーゼ創薬の進展は目覚ましいが、
安全性や価格の面ではまだ過渡的な薬剤である。
例えば、肺癌新薬として期待されたイレッサでは
副作用に基づく死亡例が報告され、
裁判にまで発展したことは記憶に新しい。

 

本研究ではこれとは異なる、
安全性に軸足を置いた既存薬リポジション型の
治療薬探索の基本情報を提示する。

その際、治療効果の科学的エビデンスとして、
癌特異的な代謝(リプログラミング代謝)の視点からの
癌代謝調節物質としての機能を提示する。

特に、市販後調査済(使用実績)の
ジェネリック薬と関連化合物による癌代謝調節効果を精査し、
結果として患者自身が納得して享受できる選択肢となる
化学療法剤のシーズ(ジェネリック・シーズ)を提供する。

特筆すべきは、
これまでの細胞毒性に基づく抗癌性(anti-tumor)や殺細胞性(cytotoxicity)ではなく、癌細胞代謝制御(metabolic control) 効果に主眼を置いた、安全安価な癌治療を実現することを目指す、細胞治療(癌リプログラミング療法)の一助となる化合物群を提示する点が重要である。

すでに生活習慣病薬である一部のジェネリック医薬品類
(古典的抗糖尿病薬)には有意な癌予防効果
あるいは延命果があることが疫学的コホート調査から
示唆、報告されていた。

加えて癌患者の食事・運動療法が有効であることも
報告されている現状であるが、その生化学的分子メカニズム
(科学的エビデンス)の詳細は明らかではない。

 

【手段】

まず癌細胞の特徴的な過剰代謝(リプログラミング代謝)のモデル
となる3種の 発光癌細胞系を構築した。
これらは簡便なアッセイを可能にする発光性癌細胞であり、
各種ジェネリック薬の挙動を簡便かつ総合的に評価することができ、
癌代謝調節効果の多様性を判定した。
(癌代謝トリプルアッセイ法)。

より具体的な手法としては、
炭素総数数C5~C20程度の基本骨格を持つ
低分子ジェネリック薬を任意に選択し、
脂肪酸代謝、癌代謝に影響を与えるかどうかについて精査した。

 

特筆すべきは、
複素環(ヘテロ環)構造を有するジェネリック薬
に注目した点が発明の起点である。
即ち、含窒素、含硫黄官能基、さらに
ヘテロ原子を含む複素環構造を持つジェネリック薬を中心に、
生理活性カルボン酸群について重点的に、
癌代謝調節効果を正確に検証した。

上記のような複数のアッセイ結果から浮かび上がった
最も治療効果の期待できる低分子化合物及び、
ジェネリック医薬品を提示する。

 

【範囲】

母骨格となる脂肪鎖炭素骨格からなる一般式(I)で示される有機化合物を含む。

                 
これらのカルボン酸誘導体は、
癌細胞増殖効果と癌細胞運動性、EMT(上皮間葉転換)抑制効果の
いずれか又はすべてを有する活性があることが確認された。

 

これら化合物を独自に評価した3種のアッセイ系を用いた手法も範囲に含まれる。

即ち、ここで用いたアッセイ法は

1.癌細胞増殖の抑制効果 (proliferation test); 
2.癌細胞運動性の抑制効果 (mobility test); 
3.EMT抑制効果 (EMT test) を組み合わせたもので、
その詳細は【実験の部】で詳述する。

加えて、個々の化合物の毒性に関する既知データも十分に検証し、
直接的な医療応用の面から価値が高いことを確認した。

 

具体的には一般式(I)あるいは、個々の表記のような既知の有機化合物であり
すでに幾つかの生化学的性質が知られている生理活性化合物とジェネリック医薬品である。

(1~6の分類上重複する化合物もある)

1.   (C5)αアミノ酸群:グルタミン又はグルタミン酸と同様な炭素骨格、即ちC5単位を持つアミノ酸及びその誘導体: 一般式(I)においてC2置換基として、アミノ基及び窒素官能基を持つ塩基性αアミノ酸系化合物。さらにはC2位以外に、水酸基及び酸素官能基を持つカルボン酸、硫黄官能基を含む化合物である。
具体例としては、塩基性アミノ酸のアルギニン、オルニチン、リシン、アガリシン酸、ペニシラミンなどが含まれる。

 

2.  C2位に置換基を持つα置換カルボン誘導体:一般式(I)のC2位において、アミノ基以外の官能基を持つα置換カルボン酸類。具体例として次の化合物を含む。
ヒドロキシ)クエン酸、クマリン酸、バルプロ酸、プロパンオクタン酸などが含まれる。

 

3.  C3位に置換基を持つβカルボン酸誘導体:一般式(I)のC3位にアミノ基及び窒素官能基を持つβアミノ酸系化合物、水酸基及び酸素官能基を持つポリヒドロキシ酸、硫黄官能基を含む化合物、さらには各種アルキル置換基を有する置換カルボン酸が含まれる。
リンゴ酸、金チオリンゴ酸、プレガバリン、テトラメチレングルタル酸とその誘導体などが含まれる。

 

4.  C4位に置換基を持つγ置換カルボン酸誘導体:一般式(I)のC4位にアミノ基及び窒素官能基を持つγアミノ酸系化合物、水酸基及び酸素官能基を持つポリヒドロキシ酸、硫黄官能基を含む化合物、さらには各種アルキル置換基を有する置換カルボン酸が含まれる。
葉酸及びその誘導体、医薬品等を含む。

 

5.  C5位に上記のような各種置換基、共役構造、複素環構造を持つδ置換カルボン酸誘導体。
αリポ酸及びその誘導体を含む。

 

6.   C1~5位の複数の箇所に置換基を持つ置換カルボン酸誘導体。特に含窒素カルボン酸類似構造、複素環構造と共役構造のいずれか又はすべてを含むジェネリック医薬品と生理活性化合物群。具体的には以下のものを含む。

 

6-1.     アンセリン (カルノシン)

6-2.     エパルレスタット  (エパルレスタット類似物)

6-3.     オザグレル

6-4.     シロスタゾール  (シロスタミド)  

6-5.     スリンダック  (NSAIDs)

6-6.     セリチジン

6-7.         テモカプリル (ACE)

6-8.     ピオグリタゾン (チアゾリジン)

6-9.     ピタバスタチン (スタチン類似物)

 

6-10.    プランルカスト

6-11.    ブロナンセリン

6-12.    ミコフェノール酸

6-14.    モンテルカスト

6-15.     レバミピド (大塚

 

6-17.     GT-863 (HCl)

6-18.     SN-38 (HCl)

 

 

 

上記化合物は一般的な生活習慣病薬として広く利用されている既知化合物である。
すでに一群の受容体拮抗薬、酵素阻害剤としてその分子メカニズム(薬理作用)が十分に検証されているが、
癌代謝調節に関する明確な知見(評価)は皆無であった。この点が本特許化に至った根拠である。

従って本特許化合物の具体的な医薬用途として、直接的な投与、あるいは栄養輸液による補助的投与が直ちに可能であると考えるに足るエビデンスがある。さらに実効的な癌治療においては、癌予後効果、術後の再発予防、管理等の直接的な適用が可能であることが期待される。

 

【実験の部】

1.   癌代謝アッセイを行う細胞系3種の作成

 

2.   各種ジェネリック薬及びカルボン酸類のアッセイ法

 
3.   代表的ジェネリック薬の癌代謝調節効果の評価

特に活性の強いものが上記6 で示された化合物群 である。

 

 

 

 

【効果)】

既存ジェネリック薬の癌代謝調節効果に関する科学的エビデンスは皆無であった。

その一方で、各種の混合薬剤による(根拠不明瞭な)癌治療(予防、予後)の可能性を論じた特許、非特許論文は数多く存在している。

 

例えば、スタチン類については癌治療への期待を抱かせる報告も多いが、その効果の詳細な分子レベルでの解明はなされていない。即ち既知の酵素阻害の延長上にある知見に留まっている。本特許では複素環スタチンにおける顕著な癌細胞運動制御効果を提示した点が、既知特許とは明らかに異なる点である。

同時に、類似の複素環構造を持つシロスタゾールやレバミピドも癌運動性に関与するシグナル系に関与することも解明された。その一方、エパルレスタットはスタチンとは異なる様式で癌代謝に関与することも解明された。

 

このように、独自に3つの異なる細胞系を組み合せる簡便なトリプルアッセイ法(増殖、運動、EMTアッセイ)の効果によって初めて、上記ジェネリック薬(とその類似物)、及びカルボン酸誘導体が、特長ある癌代謝調節効果を示す明確なエビデンスが提供された。この代謝制御のより正確な分子メカニズムについては、おおまかに二つの型(スタチン型とエパルレスタット型)があることが把握された。

 

本特許の発見は、C5単位の脂肪酸代謝(メバロン酸経路)に近似した化合物が過剰な脂質代謝に影響を及ぼすことを示し、薬理学上のアンタゴニスト作用、あるいはインバース・アゴニスト作用として理論的に包括、理解できる事実である。ここに示した癌代謝調節分子の多くががヘテロ原子、ヘテロ環構造を含むことは、癌代謝へのインバース効果が、化学的な酸化還元反応への関与であることも示唆される。

 

一連の実験結果と論証から、これまで示唆的報告のあった各種ジェネリック医薬品を単独で癌代替治療に使用できる明快な知見が得られ、癌予防や予後治療の候補として単独活用できる道が開けた。

これらの結果は、直ちに活用できるジェネリック薬や栄養素の提示を最新の科学的なエビデンスと共に癌患者に提供できることになり、医療上の簡便性、安全性、経済性の面からの価値は大きい。

2014年12月27日土曜日

Rho & ROS & NOS



Rho GTPase による ROS の制御

細胞内の ROS/RNS 生成は、
主に、NADPH オキシダーゼ(NOX)、
一酸化窒素合成酵素(NOS)、
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などの、
主要な酸化還元酵素に由来します5,9,10(図1)。


Rho GTPase(特に Rac1と Rac2)は、
活性化されたNOX 複合体の構成要素であり、
続いて起こる酸素分子(O2)からの ROS(スーパーオキシドアニオン、O2.-)生成に必要となります11


細胞外シグナルによって活性化されると、
NOX 複合体は細胞膜で会合し、Rac(GTP結合型、おそらくGDIが結合)の関与によりROS が生成されます12,13(図1)。


Rac が、アダプターとして作用するのか、
O2.- 生成の電子伝達を仲介するのかは、未だ明らかになっていません12


また、Rac(特に Rac1)は、
一酸化窒素(NO)の生成を制御する酵素である NOS と、
直接相互作用することが示されています13


NOS は、ヌクレオチドフリー型の GTPase に優先的に結合する
ことが報告されており、Rac が仲介する NO 産生に、
グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)、
及び GEF を介した細胞内区画化が関与していることが示唆されます13


さらに、Rac は、
O2.- の過酸化水素(H2O2)への変換を触媒する酵素である SOD と、酸化還元によって直接相互作用することが示されています14


還元条件下では、細胞内と同様に、
Rac-GTP が SOD に結合することで Rac の活性が維持され、
NOX による O2.- の産生が促進されます。


酸化条件下では、局所的な O2.- / H2O2 生成と同様に、
まだ同定されていない GTPase 活性化タンパク質(GAP)
によって、SOD が Rac から解離し、不活性型である GDP 結合型に変換されると考えられています14


これらの報告から、Rho GTPase は、
多数の活性酸素中間体(RIs)を生成し、
多様なタンパク質修飾をもたらす可能性があることが明確に示されます。


生成される ROS/RNS、及び誘発される細胞応答の種類は、
与えられた刺激、細胞内の局所的な酸化還元電位、細胞の位置などによると考えられます。



シグナル伝達における Rho GTPase - ROS 間のクロストーク

 
 

図1 シグナル伝達における

Rho GTPase - ROS 間のクロストーク

 
細胞内において想定される Rho GTPase - ROS/RNS 間の
クロストーク概略図。
 
 
間接的(オレンジ色)、直接的(青色)、
フィードバック(ピンク)に分類し、その下に、
 
最も一般的なメカニズムを示した。
 
各経路の詳細については、参考文献および本文中の例を参照。

 

 

ROS による直接的/間接的な Rho GTPase の制御


近年、 酸化還元を介した翻訳後修飾(PTMs)によって、
ROS/RNS が直接 Rho GTPase を制御する可能性がある、
という興味深い報告がなされています。

 

2014年12月17日水曜日

Y-27632 2017

As A General Information;


http://www.cosmobio.co.jp/product/detail/y-27632-dihydrochloride-enz.asp?entry_id=16716




Y27632はROCK/ Rho-kinaseを ATPと拮抗的に阻害する。


細胞においては10-30μM程度の濃度でよく使用される。
ROCK/Rho-kinase活性の阻害により
基質のミオシン調節軽鎖(MRLC)のリン酸化は抑制され、

また別の基質であるMYPT1のリン酸化が抑制される
ことによりMYPT1をサブユニットとする
ミオシンフォスファターゼが活性化し、
MRLCの脱リン酸化が亢進する。


これによりミオシンIIのATPase活性の低下、
脱重合が起こるため、細胞内のミオシンIIの機能は低下する。
ストレスファイバーの崩壊など、
アクチン細胞骨格の大きな変化が見られる。

ROCK/Rho-kinaseの基質は他にもあるものの、多くの細胞において上記の変化は目立つ。

IL-23 production was elevated by lipoteichoic acid (LTA), 
which increased the activation of RhoA in association with increased the nuclear translocation of NF-kB
and its DNA-binding activity.

Pretreatment of RA macrophages with the pharmacological inhibitors exoenzyme C3 (RhoA),
Y27632 (Rho-kinase) or BAY11-7082 (NF-kB)
inhibited IL-23 production by LTA.

Inhibition of the RhoA/Rho-kinase pathway by these drugs attenuated NF-kB activation.


Cilostazol suppressed the TLR2-mediated activation of RhoA,
decreased NF-kB activity with down-regulated IL-23 production, and these effects were reversed by RpcAMPS,
as an inhibitor of cAMP-dependent protein kinase.





ML7 とML9 はそれぞれミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)をATPと拮抗的に阻害する。


しかしその細胞への使用には大いに注意が必要である。
MLCKによるリン酸化部位を擬似リン酸化型に変えた
変異MRLCを発現する細胞では、
Y27632で処理をしてもその変異MRLCは影響を受けずに
機能し続けるので,ストレスファイバーに変化はないが、
ML7で処理をするとストレスファイバーは崩壊する。


これはML7がMRLCのリン酸化を介さずにアクチン細胞骨格に大きな作用をするということを示している。

2014年12月11日木曜日

GPCR Modulators: Statin Is Inverse Agonistic !!

3. The HMG CoA Pathway & Rho


Statins are well known inhibitors of 3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A (HMG-CoA) reductase—the crucial rate limiting step in hepatic cholesterol biosynthesis.

Independently of the cholesterol lowering effect,
the inhibition of HMG-CoA leads to reduced synthesis of isoprenoid intermediaries—farnesyl pyrophosphate (FPP) and geranylgeranyl
pyrophosphate (GGPP)  (Figure 2) [32].

 

These precursors of cholesterol biosynthesis are essential for post-translational modification and prenylation of certain small GTPase proteins, include the Ras and Rho superfamilies [33].



Prenylation of these proteins facilitates their intracellular trafficking and covalent attachment to the lipid membrane, which is often essential for biological function.


These small GTPases cycle between an inactive GDP bound form found in the cytosol in association with guanine dissociation inhibitor (Rho GDI), and an active GTP bound form usually associated with the cell membrane (Figure 3).



When Rho proteins are released from GDIs, they can insert into the cell membrane where they are activated by guanine nucleotide exchange factors (GEFs), and this initiates interaction with membrane effector proteins such as Rho kinase (ROCK).



The Rho family of proteins is implicated in many key intracellular events and signalling pathways, including regulation of the actin cytoskeleton, cell adhesion, cell to cell interaction, and cell-cycle progression.

This topic is comprehensively reviewed by Burridge and colleagues [34].


It is thought that inhibition of the Rho pathway by statins is one of the major mechanisms via which statins affect cell physiology.


 

5.2. Rho Inhibition

 

Probably the most important pleiotropic effect of statins is the inhibition of small GTPases, including the Rho family of proteins [77].

 

The Rho pathway is responsible for various integral intracellular processes and for the interaction between cells and their environment.

 

Three subfamilies constitute the Rho superfamily—Rho, Rac, and Cdc42.

Regulation of the actin cytoskeleton, microtubule dynamics, vesicle trafficking, cell polarity and cell-cycle progression are all under the control of the Rho proteins (Figure 4).

This topic is comprehensively reviewed by Burridge et al. [34].

 

The Rho proteins contain a lipophilic isoprenoid group, which permits their attachment to the cell membrane and is generally essential for biological function.

By inhibiting the conversion of HMG-CoA to L-mevalonic acid, statins inhibit the synthesis of isoprenoid intermediaries, including FFP and GGPP.

Hence proper subcellular localisation and trafficking of these GTPase proteins is inhibited, with significant
functional consequences.

 Importantly, post-translationally immature forms of G-proteins may maintain partial function [79] [80], and interfere with the activity of mature membrane-anchored proteins.

 By inhibiting Rho and its downstream effector proteins including Rho kinase (ROCK), statins are likely to
affect the contractile properties of the conventional outflow pathway.

 

 Cells of the conventional pathway possess a contractile tone which is regulated through Rho signaling [81].

 ROCK phosphorylates and inhibits the myosin- binding subunit of myosin light chain (MLC) phosphatase.

 This action increases MLC phosphorylation and
myosin contractility, hence driving the formation of stress fibres and focal adhesion [34].

 

Early work on specific inhibitors of the Rho pathway has shown that Rho inhibition results in relaxation of the contractile tone of cells of the aqueous outflow pathway in vitro and ex vivo [78] [82] [83].

 This increases aqueous outflow and reduces intraocular pressure.

 

Indeed Rho kinase inhibitors have been shown to be potent agents in lowering intraocular pressure, and are undergoing phase 2 and 3 clinical trials [31] [84].

 This effect of Rho inhibition in lowering the O. Pokrovskaya et al. 130

 

More recent studies in this field have demonstrated the potential beneficial effect of combination therapy with a statin plus a Rho kinase inhibitor [86].

 Rho inhibitors also affect the actin cytoskeleton, and cellular morphology of the aqueous outflow pathway.

In vitro work has shown decreases in actin stress fibres and focal adhesions in cultured porcine and human TM cells [83].

 

Treatment of monkey Schlemm’s canal (SC) cells with a Rho inhibitor increases the number of giant vacuoles within cell, and decreases the expression of certain cytoskeletal proteins (ZO-1 and claudin-5) [87].

 This leads to morphological changes—cell rounding and detachment of cells from each other, as well as wider
paracellular spaces [78] [88].

 In cultured cells of the SC, Rho inhibition results in increased permeation in vitro, which facilitates aqueous drainage [88].

 Ex vivo perfusion experiments, where porcine, monkey, cow and cadaver eyes are perfused with an aqueous humour substitute, have shown that perfusion with a Rho inhibitor increases the conventional outflow facility [78] [83] [88] [89].

 

5.3. Rac and Reactive Oxygen Species (ROS)

 

One of the 3 key members of the Rho family is Rac1—this important GTPase protein is responsible for cytoskeletal
remodelling—specifically the formation of lamellipodia and membrane ruffles [90].

Lamellipodia are actin-rich cellular protrusions, essential for cell migration, and play an important role in the invasion and metastases of cancer cells [91].

 

Furthermore, Rac1 binds to p67phox which leads to activation of the NADPH oxidase
system and generation of ROS [92].

 

The presence of high concentrations of ROS can overwhelm the cell’s natural defence mechanisms and lead to programmed cell death. However the role of ROS in cell physiology is
more complex thanthat and more recent studies have shown that in some scenarios, ROS (in small doses) promote
cell survival—contrary to the traditional view that they are solely destructive molecules [93] [94].

 

ROS have also been shown to act as signalling molecules in their own right [95]. In smooth muscle and heart cells, it
has been shown that by inhibiting the prenylation and subsequent activation of Rac1, statins inactivate NADPH
oxidase and hence reduce angiotensin-II-induced ROS production [50] [96]. Our own research group has previously
demonstrated evidence of oxidative stress and mitochondrial dysfunction in lamina cribrosa cells from
the optic nerve heads of glaucoma donors, compared to normal donors [97].

 

 

Furthermore, our group has shown
that up to 50% of POAG patients have a pathogenic mitochondrial DNA mutation, which may lead to mitochondrial respiratory dysfunction and subsequent predisposition to oxidative stress in TM, LC and RGC [98].

 

Increased levels of ROS have been found in the aqueous humour of glaucoma patients [99] [100]. Glutathione is
a tripeptide found in the eye and other tissues, and is a key element of the protective mechanism of the eye
against oxidative stress [101]. Altered glutathione levels have been reported in the aqueous humour of glaucoma
patients [102], and abnormally low levels of glutathione have even been demonstrated in the serum of glaucoma
patients [101]. ROS affect the cellularity of the trabecular meshwork, and may cause endothelial dysfunction—
O. Pokrovskaya et al. 132
which would contribute to impaired aqueous outflow and higher IOP [103].

 

Mitochondrial dysfunction in LC and RG cells allows the build-up of ROS, and may lead to increased susceptibility to cell death and impaired
repair mechanisms [97] [104].

 

By reducing the production of ROS in ocular tissues, statins may help to reduce ROS-induced damage and glaucoma progression.


2014年12月6日土曜日

135回 薬学会年会@ 神戸

 

複素環ジェネリック薬の癌代謝調節効果

高崎健康福祉大・薬: 鳥澤保廣,村上孝
同志社大学・脳科学研究所:
徳島大学大学院・薬
群馬大学大学院・理工


【目的】複素環ジェネリック薬には興味あるプレイオトロピック(多面性)効果を有するものが多い。すでに報告したように、キノリン環やロダニン環などの含窒素ヘテロ環系医薬品には、癌代謝と関連するRho/ROCKシグナル伝達系への関与が示唆されている。

32回メデイシナルケミストリーシンポジウム@神戸:2014

今回は、複素環ジェネリック薬の代表的な以下の8種の医薬品につき、癌代謝調節効果を解明することを目的とした各種アッセイ、構造活性相関、さらには分子軌道(MO)アナリシスを行い、関連する化合物の癌代謝に対する調節効果を総合的に評価する。

 

【方法】ジェネリック薬の癌代謝調節効果に関しては以下の2点に注目した。

1.癌細胞増殖効果の有無; 

2.癌細胞運動に対する静止効果の有無

特に、癌細胞増殖効果と静止効果において顕著な効果を有するジェネリック薬の発掘を目指し、文献上、代謝系におけるプレイオトリピック効果が知られている次の8品について詳細な検討を行った。

 
 

[カンプトテシン(SN-38);モンテルカスト;シロスタゾール;ピオグリタゾン(チアゾリジノン);スタチン;カフェイン;ロダニン;ビグアナイド]

 

【実験結果と考察】上記ジェネリック薬に於いては、癌代謝に於ける興味深い効果が認められると同時に、各種誘導体間における活性の差異、さらには置換基効果等の構造活性相関(SAR)を議論する知見も得られた。分子軌道(MO)計算によっても、これら活性の違い、化学反応性について論じたい。